酒井高徳がキャプテンに選ばれた理由 HSVが取り戻した勢いと「落ち着き」
「酒井は自分のパフォーマンスで周りを納得させる」
酒井は大声を出すわけではないが、自らのパフォーマンスで周りを納得させることができる 【Getty Images】
「ジュルーのパフォーマンスには十分な継続性がなかったし、キャプテンとして認められるだけのカリスマ性がなかった。翻って酒井は、残留争いをしているHSVが必要とするすべてを的確にこなしていた。プロとしてすべてを尽くす人間性。その姿勢こそ、まさにギスドルが求めていたものだ」
「酒井は大声を出したりしないし、決して机を拳でたたいたりしない。酒井は自分らしく話をするし、チーム内では仲間たちが酒井の言葉を厳粛に受け止める。それに酒井は、自分のパフォーマンスで仲間たちを納得させる。少し疲れているように見える時期もあったが、HSVの中で最も安定感のある選手の部類に入る。彼の立場は、絶対的にポジティブなものだ」。ヨバノフは、そう断言する。
「僕は当初、少し懐疑的だったんだ」とヨバノフは明かす。「HSVには、大口をたたくやつや、クレイジーなタイプの選手はいないんだ。例えば、1月に契約解除されたエミル・スパヒッチはそういう選手だった。
他の選手は皆、とても親切だし、ナイスガイばかりだ。何かがうまくいかない時には、怒るよりも陰に隠れるような選手たちだ。キャプテン就任は酒井にとっても後押しになったし、うまくいかないことがある時には、決して自分に諦めることを許さない。キャプテンという大役が、本当に彼をたきつけることになったね」
キャプテン就任は大きなパズルのピース
HSVがさらなる成功をつかんだならば、酒井の存在こそが大きな理由になるかもしれない 【Getty Images】
「ジュルーから酒井へのキャプテン変更は、ギスドル監督による、さらなる大きな変化の一部なんだ。全員がクラブハウスにいる時間を長くするようになったり、外国人選手には語学のレッスンをするようになっている。元ドイツホッケー代表で、金メダリストのトビアス・ハウケにチームマネジャーとして広報担当を任せたり、エミル・スパヒッチを追い出したりした。驚きではあったけれど、HSVに落ち着きを取り戻すには、十分なインパクトがあった」
ブフハイスターは続ける。「酒井がチームメートに向かって叫んだり、大声を上げることはない。酒井はバランスの取れた男で、生まれついての威厳がある。それがチームから尊ばれているんだ。彼のパフォーマンスは、そのイメージにぴったり合っている。彼のプレーは決して圧倒的ではないけれど、いつも堅実だ。本当に頼れるタイプの選手だよ。本来のSBから、中盤の6番(守備的MF)のポジションに移ることが多いとしてもね。こうした点から見ても、彼は本当に良いキャプテンだ」
「酒井がキャプテンという役割を過大評価することはないだろう」とブフハイスターは分析する。「自身の努力と態度でチームの尻をたたくのは、この冬に移籍してきた(キリアコス・)パパドプーロスだ。彼はキャプテン然としたタイプだね。酒井のキャプテン就任は、クラブを落ち着かせて新たな衝撃を起こすという点で、さらに大きな助けになったと思うよ」
そのインパクトは十分に大きなものとなった。何しろこの数年間、HSVにこれほどの「落ち着き」が訪れたことはなかったのだから。だからこそ、HSVが今季リーグ後半戦でさらなる成功をつかんだならば、酒井というキャプテンの存在こそが、その大きな理由になるかもしれない。