「勝った後のシーズンが何より難しい」 カーリング女子、重圧に苦しんだ1年

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浮き彫りになったメンタル面の課題

五輪出場の経験があるのは本橋(中央)と吉田知(右)のみ。追われる立場となり、メンタル面の強さが問われている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 一方で、LS北見の選手たちは違う見方をしている。リザーブとして試合を最も近くで見続けてきた鈴木夕湖は、「上から見ていて実力は(決勝を戦う)中国、韓国に劣っていない」と分析し、吉田知那美(セカンド)・夕梨花姉妹も「技術的には世界と肩を並べていると思っている」と声をそろえる。

 彼女たちが敗因として口々に挙げていたのは精神面だった。「中国、韓国にはメンタルが負けていた」(吉田夕)、「大事な場面でのショット精度はメンタルに左右される」(鈴木)。

 高い集中力と読みの力が要求されるカーリングは「メンタルのスポーツ」と呼ばれることもある。その強化にはどうしても経験が必要だ。海外のチームでは30代、40代の選手がスキップを務めることもあり、経験を積んだ選手のメンタルの強さが重要となってくる。

 LS北見が好調だった昨シーズンと勝ちきれなかった今シーズン、環境が異なるとすれば、世界2位として挑んだシーズンだったこと、そして五輪が1年後に迫っていることだ。このチームでは本橋と吉田知以外、五輪の出場経験がない。好成績を残したことでチャレンジャーから立場が変わった上に、代表権を争うプレッシャーが加わり、知らず知らずのうちに自分たちを追い込んでいたのだろう。

 本橋は、バンクーバー五輪を制したスウェーデン代表の優勝インタビューが印象に残っているという。苦しい状況を乗り越えるだけの力を私たちみんなが持っている、との内容だった。1人だけメンタルが強くてもあまり意味がない。チーム全員で一体となって精神的に強くならなければ、安定して好結果をつかむことは難しい。

「新鮮な気持ちで氷に乗りたい」

9月の代表決定戦へ向け、どこまでチーム力を高めることができるか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 この後、海外への遠征を挟み、LS北見はつかの間のオフに入る。

「家族よりも長く一緒にいる存在。近くにいすぎて気付かないこともあるので、一回クリアしてまた集まって、新鮮な気持ちで氷に乗りたいです」(本橋)

 次なる大一番は9月の平昌五輪代表決定戦、そこを乗り越えれば来年の五輪本戦だ。LS北見はもう五輪に出るだけが目標ではなく、五輪でのメダル獲得を照準に合わせているチーム。今大会で選手たちが課題に挙げたメンタル強化のため、本橋は「より考えるカーリングをして、もっと密にコミュニケーションを取って、誰かの心が折れてしまった時に助け合えるように」と修正能力を高めたいと話した。

 自負のある高い技術力に加え、苦しい状況を乗り越えられる勝負強さが増せば、来シーズンは一皮向けたLS北見が見られるかもしれない。「『代表決定戦は通過点』と言えるように強くなって帰ってくる」。本橋はそう誓って大会を去った。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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