まだまだ“青山学院大時代”が継続か 駒大OB神屋氏が第93回箱根駅伝を解説
伝統校がしっかり粘ってシード権を獲得
東洋大は9区・野村峻哉が区間賞を獲得するなど、しっかり地力を見せての2位だった 【写真:アフロスポーツ】
2位の東洋大もそうですが、3位に入った早稲田大も、レース前の時点である程度戦えるということは言われていました。その力を多少出せなかった部分や出せた部分がありましたが、しっかりと地力を出しての2位、3位だったと思います。今回は青山学院大が圧倒的過ぎて、(復路で)トップに上がるシーンはありませんでしたが、チームの地力をしっかり出せたのかと思います。
――上位3校に加え、駒澤大、東海大、山梨学院大については戦前から“6強”と呼ばれていました。ですが、この3校の間には順天堂大、神奈川大、中央学院大、日本体育大、法政大が食い込む形になりました。その要因については?
戦前の予想については出雲駅伝や全日本大学駅伝、またはトラックレースのタイムだったりを見ていますので、箱根駅伝のように各選手が20キロ以上を走る力で言うと、それほど差がなかったのだと思います。もしくはビッグネームがいるかいないか程度の差でした。
そういう意味では、これらの学校がしっかり走っていましたし、特に中央学院大は全日本大学駅伝でも上位に入るなど駅伝でのうまさを見せていたので、6強を脅かすとは言われていました。ですので、東海大、駒澤大も踏ん張ってしっかりシード権は取っていますので、ミスは多少ありましたが、力は出したと思います。そのほかの学校については、きっちり粘って、シード権を獲得できました。
法政大は6区の1年生・佐藤敏也が快走を見せるなど、強かった時代のいいイメージがよみがえった 【写真:アフロスポーツ】
法政大は過去に、関東学生連合に平賀喜裕選手を出した駿河台大監督の徳本一善さん、法政大の監督を務めている坪田智夫さんが1区、2区を走って往路で上位争いを演じた時代がありました。そのイメージもよみがえりますね。今回の1区の坂東悠汰選手(2年)が身長も大きく(190センチ)、見た目的にも目立っていて、昔の良いイメージの法政大に戻ったという印象です。
――シードを逃してしまったチームについては?
どこが悪かったということではなく、調整をミスして体調不良の影響があったりと、本番に臨む以前のところでミスがあったことで、本番に照準を合わせ切れなかったところが下がった要因だと思います。
それは本番だけでなく、予選会を突破できなかった城西大、東京国際大、中央大にしても同じで、力自体はほとんど変わらないです。少しの崩れがあるだけで、予選会を突破できなかったり、シード権が取れなかったりに繋がるので、それだけ力が拮抗しているがゆえの結果だと思います。
世界を意識していくことで箱根も変容していく
リオ五輪日本代表となった順天堂大の塩尻和也など、箱根を通過点として、世界に挑む選手が増えることで、大会も変容していくことになるだろう 【写真:アフロスポーツ】
復路に関しては、青山学院大が主力メンバーをつぎ込み、往路に力をつぎ込んだチームとは真逆の作戦を取ったことで、結局終わってみると圧勝という結果になりました。
これを見ると来年以降も、原晋監督率いる青山学院大を中心に、どんな手を打ってくるか、どんな作戦でくるのかを見ながら、ほかのチームは動かざるをえないと思います。青山学院大が何をしてくるかによって、箱根駅伝の内容も変化してくるのではという印象です。引き続き、青山学院大の時代が続き、箱根の話題の中心が青山学院大になりそうです。
また今回の大会でよく耳にした掛け声で、「世界を目指して」という言葉がありました。各大学の監督、選手からその掛け声が聞こえましたが、やはり2020年東京五輪、そしてその先を見据えて、各大学から世界を目指す選手が出てくると思います。今回は順天堂大の塩尻和也選手(2年)がチームを大きく活性化させていましたが、今まで以上に「箱根は通過点」であり、その先の世界を目指す選手、指導者が強くなればなるほど、箱根駅伝が変容していくのだと思います。