優勝争いは下北沢成徳と金蘭会が軸 タレント豊富な春高バレー女子の見どころ

田中夕子

2強を追う誠英と就実

浜松明日香(左から2番目)や鎌田咲希(右)らを擁する誠英は2強を追う存在 【写真は共同】

 2強を追うのは国体3位の誠英と4位の就実。どちらも非常に鍛えられたチームです。
 誠英の注目はMB浜松明日香と、セッターの鎌田咲希。浜松選手はミドルエリアからに限らず、ライトからの攻撃も非常に優れています。鎌田選手はセッティングの能力はもちろん、レシーブ力も非常に高い。なかなかボールを落とさず、決めるべきところで浜松選手が決める。上位進出のためには大阪国際滝井、東九州龍谷、細田学園(埼玉)など強豪ぞろいのブロックを勝ち進まなければなりません。ですが、それだけの力を持ったチームであり、チームをけん引する2選手の活躍にもぜひ注目してほしいですね。

 就実もタレント豊富なチームですが、中心はMBの小川愛里奈。センターから攻撃するだけでなく、ライトからの攻撃もできる大会屈指のアタッカーと言える選手です。さらにサーブレシーブに長けたレフトの兵頭由希、ライトの新井祥、セッターの白濱彩花と万代真奈美といった技術に長けた選手がそろっている。チーム全体としてサーブ、サーブレシーブ、セッティングに時間をかけて練習しているチームだなという印象があります。フロアディフェンスも高いレベルで実にしつこい。京都橘との初戦は、非常に鍛えられたチーム同士がぶつかる大会屈指の好カードと言えるでしょう。

八王子実践の2年生・東谷玲衣奈にも期待

八王子実践の2年生・東谷玲衣奈(左)も将来が楽しみな選手(写真は前回大会) 【写真は共同】

 第一シードの下北沢成徳とおそらく初戦で対戦すると予想されるのが福井工大福井。アジアジュニア選手権に出場した上坂瑠子、サウスポーのポイントゲッター若泉佳穂、1年生の山下晴奈。この3選手を軸にした攻撃力の高いチームです。1、2年生が主体ではありますが、それぞれセンターでもライトでもバックアタックも打てる、器用な選手がそろっています。下北沢成徳にとっては初戦の相手として決して侮ることのできない相手です。

 そして東京の2チーム、共栄学園と八王子実践も上位進出のチャンスは大いにあります。共栄学園は2016年大会の春高出場を逃がした悔しさを持って、この1年取り組んできた成果が予選で発揮されていました。アジアジュニア選手権に出場したオールラウンダーの荒谷栞を中心に、全員がさまざまな攻撃を同時に仕掛ける「ポジションレスのバレー」を展開するチームです。太田豊彦先生がつくりあげた、玄人好みの面白いバレーボールを春高でどれだけ見せられるか。どのクイックを軸にした攻撃を仕掛けてくるのかに注目です。

 前回準優勝の八王子実践は主将のMB積山春花、レフトの東谷玲衣奈、セッターの山口結可、この3人を軸とするチームです。下北沢成徳の山口選手と同様に、積山選手もブロックのリーディングレベルが非常に高く、相手のレフト、ライトへの攻撃に対する反応がスムーズで、「当てずっぽう」で勝手に動くのではなく、最後の最後までしっかりと見極めてからスタートする技量を備えています。2年生の東谷選手もサーブレシーブが良いことに加え、跳躍力が抜群で将来が非常に楽しみな選手。キレのあるスパイクを真下に打つだけでなく、広角に幅広く打てる技術を持っているので、下北沢成徳の黒後選手に追随するレベルになるのではないかと期待している選手の1人です。

春高独特の雰囲気を味わってほしい

「春高ならではの面白さ、素晴らしさを感じてほしい」と語る安保監督 【スポーツナビ】

 例年は準々決勝の翌日に休息日があり、準決勝、決勝に臨んでいましたが、今大会は1月4日に開幕し、決勝戦が行われる8日まで休みはありません。5日間で6試合。しかも準決勝以降は5セットマッチで選手にとっては非常にハードな日程です(準決勝までは3セットマッチ)。

 もちろんどのチームもこの強行日程を勝ち抜くための準備をしていますが、肉体的にも精神的にもかなりハードですので、その日の疲労をどれだけリカバリーできるか。フィットネスの部分も鍛えられていなければ、このトーナメントはなかなか勝ち抜けないのではないでしょうか。

 今回の春高に出場する選手たちは、昨年のアジアジュニア選手権に出場したメンバーを筆頭に、非常にレベルの高い世代であり、2020年の東京オリンピックのメンバーに選ばれる可能性を持った選手です。そして24年のオリンピックで中心になるであろう選手たちがそろっています。強豪チームや上位に勝ち残るチームだけでなく、下位で負けてしまうチームの中にも逸材がいるかもしれない。ぜひ会場で春高独特の雰囲気を味わいながら、「この選手は将来大成しそうだ」と、ご自身の目で選手や試合を見てほしいですね。

 そして、この舞台に立つことができず、予選で敗退していったチームも数えきれないほどあります。春高に出場できたチームの中にも試合に出ることはできず、チームのサポートに徹する選手もいます。華やかな舞台で活躍する選手たちの姿はもちろんですが、たとえコートに立つことはできなくても一緒に戦ってきた選手やそれを支えたご家族、学校関係者。さまざまな人たちに思いを馳せていただき、春高ならではの面白さ、素晴らしさを感じて下さい。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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