4区、5区の距離変更がレース展開に影響 駒大OB神屋氏が箱根駅伝往路を解説
助走がなくなり山上りは我慢比べに
距離変更で順位変動も多く見られた4区だが、青山学院大の森田のように淡々とペースを刻めた選手がチームに貢献できた 【写真:アフロスポーツ】
秋山選手は年間を通して調子が落ちており、この1年間は特出する結果はありませんでした。ですが、本番ではきちっと走ることができたと思います。これは青山学院大全体に言えますが、本番に状態をしっかり合わせることができるから、地力に勝る形が出たのだと思います。
秋山選手は結果的に区間賞でしたが、それを狙っていたわけでなく、堅実に走った結果が区間賞に繋がったのだと思います。
――4区では、トップこそ青山学院大と早稲田大が守りましたが、その下では大きな順位変動も見られました。これは距離が伸びた影響もあったのでしょうか?
これは4区だけでなく、1区から堅実に流れを保つことが重要になり、駅伝の様相が変わったからだと思います。その中で4区に力を入れるチームもあったので、順位変動も激しくなったのだと思います。ですから以前より、緻密に走らないと結果が出にくくなった印象です。青山学院大の森田選手を筆頭に、淡々と堅実に3分程度のペースを刻んでいったチームがグッと上位に上がってきました。
距離が短かった頃の4区は、小田原の前が中継所となり平地でゴールができます。ただアップダウンがしつこく繰り返す区間なので、距離が伸びた後のコースはさらにアップダウンがあって、そこまで余裕がないと大失速につながりやすいです。
――距離が短くなった5区はどうでしたか?
私が1年生の時、旧コースを走っているのですが、今回のコースだと助走を付けられません。距離が伸びたときは助走ができ、勢い良く一気に上ることができたのですが、助走がなくなった分、最初からゆっくりと上り始め、リズムをつかみづらいのです。そうなると、単純な我慢合戦になってしまい、下りでペースを上げられた選手が好記録を出せたのだと思います。早稲田大の安井選手は上りの勝負より、下りの勝負で差を縮められたのかと思います。
その意味では青山学院大の貞永選手も、しっかりペースを刻みきれたと思いますので、合格点の走りだったのではないでしょうか。
青山学院大の復路のメンバーに注目
早稲田大の5区・安井が青山学院大との差を33秒まで詰めた。復路ではオーダーも注目となる 【写真:アフロスポーツ】
残しているメンバーを見ると青山学院大は下田裕太選手(3年)、田村和希選手(3年)、安藤悠哉選手(4年)と、往路を走ってもいい選手が何人も残っています。これは状態が悪くて置けなかったからなのか、最初から復路重視だったのかと、その理由が大きく左右すると思います。やはり青山学院大のオーダーに注目が集まりますね。
2位の早稲田大も井戸浩貴選手(4年)、光延誠選手(3年)、新迫志希選手(1年)といった選手を往路のメンバーから外しているので、まったく戦えないわけではないと思います。
また4位の東洋大も復路にメンバーを残しているので、まだまだ優勝争いには残っている状況だと思います。
6区のスタートダッシュでどうなるか? 仕切り直しのところがすごく大事になるかと思います。
―― 一方で6強に挙げられていた東海大(往路15位)と山梨学院大(往路16位)はシード権争いに加わることになりそうです。
駒澤大4区の中谷圭佑選手もそうでしたが、ミスが出ると辛いですね。山梨学院大は1区で出遅れてしまい、東海大も2区と3区で、ミスが出てしまったかもしれません。1度流れから遅れてしまうと、ついていくのは難しいです。
逆に順天堂大、神奈川大、中央学院大、創価大などはしっかり粘って、6強と呼ばれるチームよりも、駅伝らしくたすきをつなげたことがよかったのかなと思います。
――いくら強いチームでもミスがあると沈んでしまうと?
今回それが顕著に現れたのが、関東学生連合ですね。3区の平賀喜裕選手(駿河台大4年)が区間2位のタイムで走りましたが、それ以外の選手は力が発揮できなかったと思います。昨年はシード権に近い位置で走っていましたが、箱根駅伝では流れをつかむということが重要なのだと思います。