西武・辻新監督の野球観に迫る 「大切なのは“アマチュア精神”」

週刊ベースボールONLINE

かつての西武黄金時代を知る辻発彦新監督。3年連続Bクラスと低迷しているチーム再建を託された 【写真=BBM】

 黄金時代の西武で名二塁手として鳴らした男が21年ぶりに帰ってきた。辻発彦、58歳。指導者経験も豊富だが、初めて監督という立場で古巣を率いる。3年連続Bクラスと低迷しているチームを再建するため、全力を尽くす覚悟を持つ辻監督の野球観に迫る――。

自分を信じて最善の策を講じるだけ

――辻監督は選手としては西武入団時の広岡達朗監督をはじめ、森祇晶監督、野村克也監督らの下でプレー、さらにコーチとしては落合博満監督らの下で選手を指導するなど、そうそうたる顔ぶれの指揮官たちと関わりがありました。初めて監督としてチームを率いるにあたって、そういった経験がプラスになるのではないですか。

 そうですね。当然、数多くの名監督と接してきたことはプラスになるでしょう。ただ、やっぱり最後は自分。例えば試合は動いていますから。流れの中で、インスピレーションがパンッと浮かぶ。自分自身を信じて最善の策を講じるだけです。

――2006年にはWBC日本代表で王貞治監督とともにコーチとして世界一に輝いています。以前、著書で「もし自分が監督になったら、王監督のような監督像が一番近い気がする」と記していましたが。

 広岡監督や森監督、落合監督は相手に悟られないように表情を表に出さないタイプです。それとは逆に、王監督は非常に熱い人。試合にグッと入り込みますし、選手とともに一喜一憂しながら一緒になって戦うタイプなんです。私も結構、声が出てしまうと思うんですよ。現役時代はセカンドを守っていて、一つの打球に対して必ず反応していましたから。だから、実際に監督としてチームを率いると王監督のようになってしまうのかな、と(笑)。

――野村監督はよく「監督采配も選手時代の経験や考え方がベースになる」と言っています。

 どうしても、私も内野を中心に考えてしまいます。守り勝つ野球。実際に外野より内野のほうが打球に触れる機会は多いですし、そこに綻びが出ると痛い。最低でもアウトにできることは、確実にアウトにしなければいけません。

投打ともに球際に強い選手を

――今年の西武はリーグワーストの101失策。特に内野守備の破綻が、大きく響いて低迷した面もあります。そこを改善するために内野守備・走塁コーチに馬場敏史コーチを招へいしました。この新コーチの存在は大きいのではないですか。

 非常に心強いですね。2人とも守備から入った選手でしたから。ヤクルトでも一緒にプレーしていますし、野球観も似たようなものがあります。気持ちが合う部分も非常に多い。守備は馬場コーチに任せておけば問題ないと考えています。

――馬場コーチと言えばオリックス時代の1995年、ヤクルトとの日本シリーズで三塁を守り、好守備を連発して、ことごとく攻撃の芽を摘んだことが深く印象に残っています。

 それが可能だったのは基本がしっかりしていたからです。下半身が動くことによって、上半身も連動してくる。すると、正しい捕球もできますし、例えば他人より遠くにダイビングしてボールをつかむことができる。いわゆる球際に強い守備につながります。

――なるほど。後藤高志オーナーも「球際に強いチーム」を求めており、チーム再建のキーワードの1つになっています。

 守備で球際に強いとは、いかなる打球でもボールを最後までしっかり見て、きっちり捕球できる胆力に優れた選手です。それが劣っていると、強打者が放った鋭いトップスピンがかかったゴロに対して思わず顔をそむけてミスにつながる。でも、球際というのは守備だけのことではありません。

――というと……。

 バッティングでも同様ですよ。追い込まれて、ボールになる変化球を打ちにいったとき、粘って、粘って、ファウルで逃げる。走塁でもベースに入るスピードであったり、タッチをかいくぐるスライディングであったり。ランダウンプレーでも、粘って、粘って、打者走者を二塁まで進めるということがあります。とにかく、すべてのプレーにおいて、「際」というところで執念を持たないといけません。

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