秋の東京中距離決戦! 天皇賞・秋を展望 狙うは毎日王冠組か長休明け2頭か

JRA-VANデータラボ

前走レース別成績

【写真4】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表4は前走レース別成績。今年の出走登録馬15頭に該当馬がいないレースにはグレーの色を付けている。すると、好走例がある前走は5つのみ。しかも、京都大賞典とオールカマーは出走例こそ多いものの好走馬は各1頭のみで、天皇賞・秋との相性はイマイチ。どうやら今年は、前走で毎日王冠、宝塚記念、札幌記念のいずれかを走っていた馬が中心となりそうだ。

 なお、前走が宝塚記念(中17週)より前に行なわれたレース、つまり中18週以上の間隔で出走した馬の成績は【0.1.1.11】となっている。好走した2頭の内訳は、08年2着のダイワスカーレットと11年3着のペルーサ。前者は出走時点でG1を3勝していた名牝で、後者は前年の天皇賞・秋で2着とレース適性をすでに証明していた。この事実から、中18週以上のローテーションを克服するためのハードルはかなり高いと考えなければならないだろう。

前走・毎日王冠出走馬の各種データ

【写真5】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表5は、前走・毎日王冠出走馬について「前走着順別成績」「前走人気別成績」「前走上がり3F順位別成績」をまとめたものである。前走着順に関しては、やはり1、2着に入っていた馬の成績がよく、最低でも5着以内には入っておきたいところ。前走人気に関しても、できれば5番人気以内というのが目安といえる。加えて、前走上がり3F順位が3位以内ならなおよし。実際に「前走毎日王冠で5番人気以内、5着以内、上がり3位以内」という馬の成績は【2.3.1.2】、勝率25.0%、複勝率75.0%、単勝回収率281%、複勝回収率242%と非常に優秀だ。なお、前走10着以下や前走10番人気以下だった馬の好走例は皆無となっている。

前走・宝塚記念出走馬の各種データ

【写真6】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表6は、前走・宝塚記念出走馬について「前走着順別成績」「前走人気別成績」「前走上がり3F順位別成績」をまとめたものである。まず前走着順に関しては、さすがにG1だけあってある程度の負けは許容範囲で、前走10着以下でなければ大丈夫。ただし、前走人気を見ると、前走宝塚記念で好走した6頭のうち5頭は前走3番人気以内に推されていたことには注意したい。また、該当するのは3頭のみではあるが、前走宝塚記念で上がり1、2位を記録した馬は1頭も好走できず、好走例は上がり3位以下だった馬に集中している点も興味深い。

前走・札幌記念出走馬の各種データ

【写真7】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表7は、前走・札幌記念出走馬について「前走着順別成績」「前走人気別成績」をまとめたものだが、非常にわかりやすい傾向が出ている。すなわち、前走札幌記念の場合、1番人気1着だった馬しか天皇賞・秋では好走例がない。そして、それを満たしていれば好走の確率は極めて高い。この組に関しては、シンプルに考えるのがベターだろう。

結論

 まず、今年も最大勢力となっている前走・毎日王冠組から考えたい。表5の項で確認した通り、この組は「毎日王冠で5番人気以内、5着以内、上がり3位以内」を満たしていると非常に優秀な成績を収めている。今年の出走登録馬でこの条件を満たすのがルージュバックアンビシャスの2頭で、特にルージュバックは1番人気1着かつ上がり1位を記録と、毎日王冠組の前走として非の打ち所がない。唯一気になるのは、当欄の前回「データde出〜た・第1057回」で指摘した通り、2010年以降の牡馬混合G1で紅一点状態の牝馬が勝利した例がないこと。それだけに、ここを勝つようなら相当な快挙といっていいだろう。
 次いで好走例が多いのは前走・宝塚記念組だが、今年のエントリーはサトノクラウンのみ。前走6着や上がり4位という点は許容範囲だが、9番人気の支持にとどまり、この組で好走率が高い3番人気以内の条件を満たすことはできなかった。

 表7の項で確認した通り、前走・札幌記念組の好走条件は1番人気1着のみ。今年注目されるモーリスは、札幌記念で同厩舎のネオリアリズムの逃げ切り勝ちを許して2着に終わっており、この条件を満たすことはできなかった。年度代表馬の実力を見くびるわけにはいかないが、データからは推奨しづらくなったというのが正直なところである。

 このレース連覇を目指すラブリーデイは、昨年と同じく京都大賞典からの臨戦となる。ただし、前走京都大賞典組の相性は悪いのは表4の項で述べた通り。過去10年、この組で唯一の好走馬というのが昨年のラブリーデイなのだが、ひとつ年齢を重ねて好走率が大きく下がる6歳になったうえに、昨年1着だった京都大賞典で今年は3着どまりということを考慮しても、昨年以上の評価はできない。同様に相性の悪い前走オールカマー組のサトノノブレスも6歳馬で、こちらもプッシュはしづらい。

 以上、今年の天皇賞・秋の出走登録馬15頭に、データからの自信を持って狙える馬は意外なほど少ない。この状況なら、中18週以上の馬を思い切って狙う手もあるかもしれない。プリンスオブウェールズS以来(中18週)となるエイシンヒカリと、安田記念以来(中20週)となるリアルスティールは、いずれも海外G1の勝ち馬で実力は折り紙付き。本来は推奨しづらい2頭ではあるが、毎日王冠組の2頭を除くとデータ的に万全という馬が見当たらない今年なら、チャンスが回ってくる可能性もありそうだ。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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