いつも陽気だったホセ・フェルナンデス 全米を駆け巡ったまさかの悲報

丹羽政善

同じ手術のダルを気にしていた

100マイル近いストレートとスライダーが武器だったフェルナンデス。2013年に12勝で新人王を獲得するも、14年にトミージョン手術を受けた。同じ手術を受けたダルビッシュを「ピッチャーのタイプも似ているし、気になる」と語っていた 【Getty Images Sport】

 彼と最後に話したのは、7月のことだったか。

 ちょうど、ダルビッシュが、トミー・ジョン手術から復帰後、肩の張りで故障者リストに入っていた。昨年7月2日に同手術から復帰したフェルナンデスも、8月半ばから1カ月ほど、戦列を離れている。当時のことを問うとフェルナンデスは、右腕の付け根付近を抑えながら、「この辺りに違和感があって、力が入らなかったんだ」と教えてくれた。

 ダルビッシュが肩に張りを感じていることを伝えると、なぜか彼は自信ありげに、「問題ない」と話した。「手術から復帰後は、よくあることだから」。

 その言葉はやがて現実となる。後半に入って復帰したダルビッシュは、以来、問題なく、マウンドに立ち続けている。ひじに関しても、「1カ月ちょっとぐらい前から、気にしなくて良くなってきてます」と24日の登板後に話した。

 その前から、フェルナンデスにはトミー・ジョン手術のことを何度か聞く機会があったが、ダルビッシュの復調具合をはかるとき、彼の経験が参考になった。あるとき、フェルナンデスにお礼をいうと、「僕とダルビッシュは、真っすぐとカーブ、スライダーを軸に投げる点で、似ているからね。僕も彼のことが気になる」と話していた。

 そのフェルナンデスが……。

お調子者に見えて練習熱心だった

5日前にガールフレンドの妊娠を発表したばかりのフェルナンデス。陽気なお調子者だったが、ピッチングが好き、バッティングが大好きで練習熱心だった 【Getty Images Sport】

 会見後、クリスチャン・イエリッチとジャスティン・ボワは、マーリンズ・パークのマウンドでしゃがみ込み、涙を流していた。チームは、フェルナンデスの母親が住む家に行くバスを手配。チームメートらの思いに応えた。

 ただ、その家にも、フェルナンデスが帰ってくることはない。

 5日前、フェルナンデスはインスタグラムでガールフレンドの妊娠を明かした。そのとき、こう綴っていた。

「君が、僕らの世界にやってくることをうれしく思う。これから、どこに行くのか分からないけど、一緒に旅する準備は出来ているよ」

 まだまだ、話したいことがたくさんあった。聞きたいことがたくさんあった。

 陽気で、お調子者に見えて練習熱心だった。ピッチングが好きだった。バッティングも大好きだった。

 いつも笑顔だった。真っすぐだった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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