山本篤、悔しい銀も「楽しめた」 パラ走幅跳で、もう一度世界記録を

高樹ミナ

成長を促すライバルの存在

4回目には自己記録タイとなる6メートル62の大跳躍を見せた 【写真:伊藤真吾/アフロ】

 そのリオパラリンピックの走り幅跳びT42クラスでは、世界記録保持者のポポフと若手のダニエル・ヨルゲンセン(デンマーク)、山本の3人によるライバル対決となり、火花を散らした。ポポフは前回ロンドン大会100メートルの金メダリスト、ヨルゲンセンは同走り幅跳びの銅メダリストである。

 結局、1本目に6メートル70をたたき出したポポフがそのまま逃げて優勝したが、山本は「3人でハイレベルな戦いができて、面白い試合になったと思う。自分自身、すごく楽しんだし、ポポフも楽しんでいた」と話す。

 さらに、「4位に入ったドイツのレオン(・シェーファー)も、今まで6メートルを跳んだことがなかったのに跳べたりして、若い選手が強くなってきている。彼らにどんどん強くなってもらって、もっとハイレベルな戦いをしたい。1本ずつ1位が入れ替わるような競った試合ができるといい」と言い、ライバルの存在が自分を成長させる要因の一つになっていると語る。

 実際、ポポフ、ヨルゲンセン、山本の三つどもえのバトルはパラリンピックの前哨戦ですでに始まっていた。山本が5月に世界新記録を出した直後、ヨルゲンセンがこれを破り、さらにポポフが6メートル72で世界新記録を更新したのだ。

 ポポフと山本は試合を離れれば仲の良い友達。リオパラリンピックでも山本が5本目を跳ぶ際、ポポフが山本の肩をポンとたたきエールを送ったシーンは印象的だった。

「ポポフにリベンジして終わりたい」

 北京大会以来、8年ぶりに手にした銀メダル。同じ色だが、山本にとって意味は全く違う。

「北京は取れちゃった銀。本当にラッキーで、ただうれしかった。でも今回は8年かけて金を目指して、狙いにいった結果の銀だったので悔しい思いが強い」

 しかし、その一方では自分の力は出し切ったとも。

「100パーセント力を出しての銀メダルだった。リオパラリンピック全体を通してはメダルを2個取れたのがすごくうれしいし、リレーのメダルは快挙だと思う。悔しい気持ちとうれしい気持ちと両方あった大会だった」

 そう話す山本は現在34歳。4年後は38歳になるが、2020年東京大会はどう位置づけているのだろう。

「4年後は分からない。でも、(東京パラリンピックへ)行きたい。競技は来年もできると思うが、その次、さらにその次となると分からない。一年一年やっていった先に東京パラリンピックがあるのかなと思っている。ただポポフには勝って、リベンジして終わりたい。今よりもまだ成長できると思うので、もう一度どこかで世界記録を跳びたい」

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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