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国枝、最後まで戻らなかった試合勘
「出直したい」V3逃すも挑戦続く

「あらゆることに不安があった」

敗れたジェラール(左)と試合後に握手をかわす国枝。4年前とは異なり、失った試合勘は簡単には戻らなかった
敗れたジェラール(左)と試合後に握手をかわす国枝。4年前とは異なり、失った試合勘は簡単には戻らなかった【写真:伊藤真吾/アフロ】

 準々決勝の13日。かなり強い風がセンターコートに吹き下ろしていた。


「選手村を出た時から強風はチャンスだな、と思っていたんですよ」


 荒れたコンディションに海外勢が手こずっても、国枝にはそれを味方につける強さがある。リオのセンターコートのサーフェスが重い、ということも、本来なら勝利を引き寄せる要因になったはずだ。


「それなのに、どちらかというと僕の方が風に影響されてしまった感じでした。(また)バックハンドだけでなくフォアも、両方とも迷いがありました」。国枝がこう振り返ったように、得意のバックハンドの威力も、精彩を欠いた。本来の姿とは違ったショットの精度、腕の振り切り、ボールへの自分の入り方。


「あらゆることに不安がありました。今大会では試合直後に練習を行って、なんとか感覚を取り戻そうと努力しましたが、最後まで戻らなかったですね」


 対戦したベルギーのジェラールは、時速152キロものサービスを放って国枝のリターンを崩し、強烈なショットで追い打ちをかけた。国枝と対戦したジェラールは、8年前にトーナメントを上りつめていった国枝の姿に重なる。若いが、しっかりした技術のベースを武器に緻密なプレーを展開する。


「若い選手ですが、経験を積んできたから、わずかなミスショットも見逃してくれませんでしたね。彼は、きっと彼自身のゲームをしたのではないでしょうか。素晴らしいの一言に尽きます」

2020年へ続く世界への再挑戦

 1月の全豪オープンで敗れたゴードン・リードは24歳。ジェラールは27歳。こうした若手の急成長により、車いすテニスの世界レベルは飛躍的に上がってきている。


 国枝がダブルスで金メダルを獲得したアテネ大会の頃、ダブルスの試合時間は長かった。どちらかのチームがミスをするまでラリーが続くからだ。しかし、今は違う。果敢に前に出て攻撃を仕掛け、試合の展開が数倍も早くなっている。車いすテニスが、ますます一般のテニスに近づいていることを感じさせられる。


 国枝はこうした若手の台頭を、むしろ歓迎している。その中で、まだまだ負けたくない、と感じている自分がいる限り、世界への挑戦は続いていく。


「痛みを抱えながら必死で取り組んできた中で、コーチやドクター、そして家族など多くの方々の支えがあって、この舞台に立てている。そのことに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。そして、コンディショニングやトレーニングも一から見直して、もう一度出直したい」


 その先に、2020年の東京パラリンピックを迎える。

 王者の先に道はない。道は国枝が作るのだ。

宮崎恵理

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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