カープ歓喜の瞬間までの長かった道のり 選手、ファンは苦汁をなめ続けた

ベースボール・タイムズ

ブラウン監督が新風を吹かせるも……

(左から)守護神としてチームを支えた永川勝浩、打線を牽引した栗原健太と新井貴浩、投手キャプテンも務めた黒田博樹。そして様々な話題を振りまきチームに新風を吹き込んだブラウン監督 【写真は共同、画像制作:ベースボール・タイムズ】

 長きに渡る成績不振を前に、球団もただ手をこまねいていたわけではない。その解決策として、06年にルーツ監督以来の外国人指揮官となるブラウン監督を招へい。キャプテン制の導入から投手の分業システムの強化、内野5人シフトなどに加え、ファンサービス重視を宣言し、自らも“ベース投げ”など記憶に残るパフォーマンスで懸命にチームを鼓舞した。

 その中で栗原健太が4番として打線の中核を担い、“天才”東出輝裕も内野の要として復活したが、それでも他球団の牙城を崩すことはできなかった。ブラウン政権下の4年間は5位、5位、4位、5位。確かに新しい風は吹いた。球団のイメージも明るくなり、女性ファンも増加した面もあったが、結果はこれまでと大きく変わらなかった。

 さらに07年オフには黒田博樹がドジャース、新井貴浩が阪神へとFA移籍。若手の成長が遅れ、選手補強が進まない中、これまでチームを支えてきた投打の柱も失った。やるからには優勝を目指す。しかし、その目標は非現実的なものだと、誰もが感づいていた。

新球場、CS初進出で見え始めた希望の光

(左から)2010年に就任し、4年目に初のCSに導いた野村謙二郎監督、センターラインを固めた丸と菊地、絶対的エースとして君臨した前田健太 【写真は共同、画像制作:ベースボール・タイムズ】

 新たな本拠地・マツダスタジアムが完成したのが09年。翌10年には野村謙二郎監督が新たに就任した。すると、新たな球団経営とともに、徐々に希望の光が差し込むようになる。

 その急先鋒が、10年に最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠を獲得した前田健太だった。ドラフトでも実利のある効果的な指名を続け、絶対的エースを軸に徐々に投手陣の駒がそろい始めた。同時に野手でも菊池涼介、丸佳浩の“キクマル・コンビ”が頭角を現し、後から加わった田中広輔も合わせた同級生トリオがセンターラインを固めた。
 
 野村監督となった最初の3年間は5位、5位、4位だったが、そこでまいた種は4年目の13年に16年ぶりとなるAクラス(3位)、球団初のCS進出というかたちで芽が出た。さらに14年も3位で2年連続のCS出場。選手の自信と自覚、ファンの盛り上がり。この頃の経験がチームの茎を太くし、徐々に高まってきたムードに乗って今季、一気に花開いた。

 チームは育ち、時代は動いた。待ちに待った悲願の優勝。セミは地中で約7年も過ごすというが、カープファンはその何倍もの長い間、沈黙を強いられてきた。初秋に鳴り響いた歓喜の声は、赤ヘル黄金時代の再来を告げるサインになるかもしれない。

(文・三和直樹、グラフィックデザイン・山崎理美)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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