カープ歓喜の瞬間までの長かった道のり 選手、ファンは苦汁をなめ続けた
ブラウン監督が新風を吹かせるも……
(左から)守護神としてチームを支えた永川勝浩、打線を牽引した栗原健太と新井貴浩、投手キャプテンも務めた黒田博樹。そして様々な話題を振りまきチームに新風を吹き込んだブラウン監督 【写真は共同、画像制作:ベースボール・タイムズ】
その中で栗原健太が4番として打線の中核を担い、“天才”東出輝裕も内野の要として復活したが、それでも他球団の牙城を崩すことはできなかった。ブラウン政権下の4年間は5位、5位、4位、5位。確かに新しい風は吹いた。球団のイメージも明るくなり、女性ファンも増加した面もあったが、結果はこれまでと大きく変わらなかった。
さらに07年オフには黒田博樹がドジャース、新井貴浩が阪神へとFA移籍。若手の成長が遅れ、選手補強が進まない中、これまでチームを支えてきた投打の柱も失った。やるからには優勝を目指す。しかし、その目標は非現実的なものだと、誰もが感づいていた。
新球場、CS初進出で見え始めた希望の光
(左から)2010年に就任し、4年目に初のCSに導いた野村謙二郎監督、センターラインを固めた丸と菊地、絶対的エースとして君臨した前田健太 【写真は共同、画像制作:ベースボール・タイムズ】
その急先鋒が、10年に最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠を獲得した前田健太だった。ドラフトでも実利のある効果的な指名を続け、絶対的エースを軸に徐々に投手陣の駒がそろい始めた。同時に野手でも菊池涼介、丸佳浩の“キクマル・コンビ”が頭角を現し、後から加わった田中広輔も合わせた同級生トリオがセンターラインを固めた。
野村監督となった最初の3年間は5位、5位、4位だったが、そこでまいた種は4年目の13年に16年ぶりとなるAクラス(3位)、球団初のCS進出というかたちで芽が出た。さらに14年も3位で2年連続のCS出場。選手の自信と自覚、ファンの盛り上がり。この頃の経験がチームの茎を太くし、徐々に高まってきたムードに乗って今季、一気に花開いた。
チームは育ち、時代は動いた。待ちに待った悲願の優勝。セミは地中で約7年も過ごすというが、カープファンはその何倍もの長い間、沈黙を強いられてきた。初秋に鳴り響いた歓喜の声は、赤ヘル黄金時代の再来を告げるサインになるかもしれない。
(文・三和直樹、グラフィックデザイン・山崎理美)