メダル期待も勝てなかった要因は? 男子20キロ競歩を識者が解説

石井安里

日本は全体的に層が厚くなってきた

今季世界ランキング1位の高橋英輝は42位と惨敗。海外レースではなかなか結果を出せないでいる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――高橋選手は2月の日本選手権で1時間18分26秒をマークして、今季世界ランキング1位で臨みましたが、昨年の世界選手権(47位)に続き、世界大会でなかなか結果を出せずにいます。

 何か不安な部分があって、前に出られなかった可能性もありますが、まったく見せ場なく終わってしまったことが残念でした。暑さに弱いのかもしれませんし、ピーキングがうまくいかなかったようですね。

 ただ、海外のレースで結果を出せない原因は本人も分かっていると思います。力は十分にあるので、その原因をよりクリアにしていけば、結果を出せるようになるはずです。高橋選手も23歳とまだ若いので、年齢的には次の東京五輪でも勝負できます。そのときは27歳ですから、むしろちょうど良い年齢で迎えられるのではないでしょうか。

――藤沢選手は、前回のロンドン(18位)に続いての五輪となりました。昨年の世界選手権では終盤まで入賞争いをしながらの13位でしたが、今回は15キロを前に遅れてしまいました。

 藤沢選手については、故障で練習を積めなかったという情報もあります。後半も粘ってはいましたが、もっと前の位置、入賞圏内で粘れると良かったですね。ベスト記録も年々着実に伸ばしていますし、経験豊富な選手です。しっかりと練習できれば戦えると思いますし、今回の結果を次に生かしてほしいです。

――中国勢が金、銀で強さを見せましたが、日本勢も今大会に出場できなかった選手を含め、着々と力を付けていると言えるのではないでしょうか?

 そうですね。今回出場した3人だけではなく、全体的に層が厚くなってきました。(股関節の痛みが長引いたため)五輪代表選考会の出場を断念した、世界記録保持者の鈴木雄介選手(富士通)が加われば、もう一段階、上のレベルで競い合っていけると思います。

――これから先、日本人選手が世界大会でメダル争いに加われるようになるには何が必要ですか?

 今回の五輪で感じたのは、大会前の持ちタイムでは分からないということです。勝負に勝つにはスピードや記録だけではなく、違う要素も必要になります。近年は国内での代表選考会で良い記録が出ています。ですが、もっと互いに駆け引きをしたり、揺さぶったり、速いペースで飛ばしながらも勝負に徹するレースを国内でできるようになれば、さらに上を狙えると思いました。

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著者プロフィール

静岡県出身。東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後8年間、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を続けた後、フリーライターに。中学生から社会人まで各世代の選手の取材、記録・データ関係記事を執筆。著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)

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