黄金期を終えたスペイン代表 ロペテギは新たな時代を切り開けるか?

チーム作りを成功させるため、乗り越えるべき2つの障害

スペイン代表のチーム作りを成功させるためには、2つの障害を乗り越えなければならない 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 そのためロペテギはカウンターによる攻撃や異なるプレーシステムを少しずつ取り入れていくことを提案しているのだが、彼のチーム作りが成功するためには2つの障害を乗り越える必要がある。1つは政治的な問題だ。

 ロペテギはデル・ボスケの支持をベースに、RFEFのアンヘル・マリア・ビジャール会長によって代表監督に任命された。だが、そのビジャールはミシェル・プラティニが活動停止となって以降、空席となっているUEFAの会長に立候補しており、9月14日(現地時間)に行われる会長選挙で選出されれば、30年近くも会長を務めてきたRFEFから離れることになる。

 ロペテギを代表監督に任命する際、ビジャールは規定通りRFEF理事会に新監督候補の承認を委ねる手順を踏まず、独断で人選を決めてしまった。すでにセビージャのペペ・カストロ会長、マドリーフットボール連盟会長のビセンテ・テンプラドら数人の理事がそのことに苦言を呈しているだけに、ロペテギはビジャールの後ろ盾がなくなった場合にはRFEF内の立場が危うくなる可能性がある。

 もう1つの問題は、代表が早急に結果を出す必要に迫られていることだ。9月5日に行われるロシアW杯予選の初戦はリヒテンシュタインとのホームゲームのため問題はなさそうだが、10月6日と10日にはユーロ2016で敗れたばかりのイタリア、そして同大会の予選でポルトガルを下したアルバニアとの連戦を迎える。新監督が落ち着いてチーム作りに専念できるか、それとも混乱した状況に苦しむことになるかは、この3試合の結果に左右されることになるだろう。

求められる次世代の台頭

モラタ(写真)ら若手が今後のスペイン代表を担っていく必要がある 【Getty Images】

 スペインの国内メディアはロペテギの招集リストがどのような顔ぶれになるのかにも関心を示している。とりわけ注目されているのはチームのリーダー的存在であり、ロペテギとともに後任候補に挙がっていたホアキン・カパロスと親交のあるセルヒオ・ラモス、ポルトでもロペテギの下でプレーし、ラ・ロハで強権を握っている代表ディレクターのマリア・ホセ・クララムントとも親しいイケル・カシージャスら重鎮たちの扱いだ。

 一方バルセロナでは、セルヒオ・ブスケッツやジェラール・ピケ、アンドレス・イニエスタ、そしてセスク・ファブレガスやペドロ・ロドリゲスら元所属選手たちの招集有無に関するニュースが待たれている。

 いずれにせよ、一時代を終えたラ・ロハは次世代の台頭を必要としている。今後はアルバロ・モラタやルーカス・バスケス、ヘセ・ロドリゲス、コケ、サウール・ニゲス、デニス・スアレスといった若手たちが中心を担っていかなければならない。
 
 ルイス・アラゴネスとデル・ボスケの指揮下で、スペイン代表は時に世界中を魅了するフットボールを実現しながら、ユーロやW杯など全てを勝ち取ってきた。その黄金期を終えた今、ロペテギは新たな時代を切り開くという困難な挑戦に立ち向かうことになる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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