ほぼ毎日走るライター南井正弘が厳選 気に入ったシューズ2016上半期リリース6モデル

南井正弘

ナイキ ルナエピック フライニット

【南井正弘】

 これまでの常識は「ランニングシューズ=ローカット」だったが、2016年春以降は「ミッドカットのランニングシューズも当たり前となった」という文章がランニングの歴史に刻まれるかもしれない。

 ランニングシューズよりも先にサッカーカテゴリーなどでミッドカットシューズを認知させたナイキは、このカテゴリーでもミッドカットデザインを発表した。それがナイキ ルナエピック フライニット。伸縮性と通気性に優れたフライニットテクノロジー採用のアッパーを足首の上のほうにまで伸ばすことで従来では得ることができなかったレベルの高いフィット性を確保しているのだ。

 実際に履いてみると心配していた足首部分の可動域を狭めるということもない。そして、その高いフィット感に驚いた。これは前足部、中足部、かかと部分のすべてであり、走行中の足の動きに合わせてシューズがピッタリとフィットしてくれることとなる。走ってみると、同じルナロンのマテリアルを使用した他モデルよりもクッション性の高さを感じる。これは新たに採用されたミッドソールサイドのサイプと呼ばれる切込みとポッドと呼ばれる楕円形状のアウトソールパターンが寄与している。そしてミッドカットデザインだからシューズ内部の蒸れを心配したが、30℃オーバーの気候で6km走っても、フライニットのアッパーは通気性が高く不快になることはなかった。

 最近になってローカットバージョンも登場したが、個人的には存在感のあるミッドカットデザインのほうに愛着を感じる。

ニューバランス M990 v4

【南井正弘】

 ニューバランスのM990といえば初代モデルが1982年に登場。その高い機能性は同ブランドのみならず、ランニングシューズ全体をリードする存在として業界で注目を集めることとなった。以降ニューバランスの900番台シリーズは落ち着いたデザイン&カラーリングにハイパフォーマンスを組み合わせることで確固たるポジションを築くことに成功している。

 今春登場したM990 v4は、構造面、デザイン面で前作M990 v3を一部継承しつつ、機能性アップを実現。クリア樹脂のヒールパーツなど、二作前のMR993を思い出させるスペックを採用し、全体にM990 v3よりも重厚感がある印象だ。

 実際に走ってみると、発泡度の高いラバーを前足部に使用するなど、軽量性とクッション性を重視したことで、アウトソールの耐久性を若干犠牲にした前作よりも耐摩耗性に優れたアウトソールコンパウンド(ゴムの配合)を採用することで、個人的には走り心地もM990 v3よりMR993のほうに近い気がした。速いペースのランには向かないが、km6分から6分30秒程度で走る際には安定感もあって本当に走りやすい。

 そのコーディネートしやすいデザイン&カラーリングにより、これまでも900番台シリーズは海外旅行に持参することが多かったが、このシューズも最近のアジア旅行に持参し、ランに街履きに活躍してくれた。

ブルックス フロー5

【南井正弘】

 一昔前はベアフットやナチュラルというキーワードがランニング業界では頻繁に囁かれ、これらキーワードをベースにしたシューズが一世を風靡したが、最近のアメリカ市場では厚底ミッドソールのクッションを重視したタイプがトレンドで、ベアフットやナチュラルというキーワードはナイキ フリーあたりを除くとちょっぴり元気がない。そしてもうひとつ健闘しているのがブルックスのナチュラルタイプ(人間本来の足の動きをある程度尊重する)であるピュアプロジェクトの系譜にあるフロー5だ。

 筆者はこのコンセプトが誕生した際のファーストコレクションにラインアップされた初代ピュアコネクトをとても気に入り、ヘビーローテーションで着用したが、実際にこのフロー5を着用して走ってみると、着地から蹴り出しまでの自然な動き、高い軽量性といった初代ピュアコネクトに感じた特徴を見事に再現していると思った。ランニングシューズのなかにはランナーを楽に走らせるために様々なサポート機能をプラスしているものも多いが、こういったモデルは自分で走っている感覚が薄れるために面白みに欠けることも多いが、このフロー5は自然な走行感覚をしっかりと残しており、その心配はない。

 意外と知られていないが、ブルックスはアメリカではランニングシューズ専門店におけるシェアがNo.1となるなど、ランナーからの信頼がとても厚いブランドで、このフロー5でもその一端を垣間見ることができた。

プーマ イグナイト アルティメイト

【南井正弘】

 2015年、プーマから発表されたプーマ イグナイトは、優れたクッション性と反発性を兼ね備えることで数多くのランナーから絶賛され、一躍プーマを代表するクッショニングテクノロジーとして知られることとなった。今春リリースされたプーマ イグナイト アルティメイトは、さらなるクッショニング性能を追求したハイパフォーマンスシューズであり、体重が重めで他のランナー以上にクッション性を必要とするユーザーにもピッタリである。

 実際に履いてみるとミッドソールの厚さを感じ、フワフワとした感覚を足裏に感じる。それでいて不安定さがないところはさすが。走り始めるとプーマ イグナイトやプーマ イグナイトv2以上にクッション性と反発性を足裏に感じ、自然とカラダが前方に押し出されるような感覚で、足を痛めやすいビギナーだけでなく、長距離、長時間の走り込みを行いたいと思っている中級以上のランナーにもオススメのシューズである。筆者はレース翌日の疲労感が残る段階でこのモデルを登場させることが多かったが、走り初めこそペースが上がらなかったものの、その抜群のクッショニング性能で、後半はいつもと遜色ないペースで走れたものである。

 このように優れたパフォーマンス性能を結集させたプーマ イグナイト アルティメイトだが、そのプライスは税抜で1万5000円。その機能性を考慮すれば高くないどころか、かなり割安だと思う。

On クラウドサーファー

【南井正弘】

 クラウドテックという独自の波型形状のテクノロジーが、自然な着地感と力強い反発性能を提供するOn。スイス生まれのこのブランドのランニングシューズはワールドワイドで着実にシェアを拡大させている。そんなOnの基幹モデルのひとつが創業モデルであるクラウドサーファー。今春に第三弾モデルが登場したが、前二作と比較して大幅なスペックアップに成功している。

 実際に足を入れてみるとエンジニアードメッシュと呼ばれる部位によって編み方を変えたナイロンメッシュは柔軟で快適な履き心地。他ブランドと異なり、Onではサイズごとにメッシュのデザインを変更しているという点にも注目が集まる。走り始めるとアウトソールに配されたクラウドテックはしっかりと衝撃を吸収して力強くランナーを持ち上げるような感覚を提供。最初にこのブランドのシューズを履いた時は「ラバーのパーツをループ状に成形しただけで機能するのか?」と思ったが、実際に走ってみると、その軽快な走行感にビックリしたものだった。

 このクラウドサーファーの第三弾では着実に機能性を向上させており、筆者は足に痛みを感じる際にこのブランドを着用することが多いが、それだけ足の保護性が高いということであり、足の保護性を重視するランナーが増えているヨーロッパ、アメリカ市場で急速にシェアを伸ばしているのも納得できる。

番外編:アシックス ダイナフライト

【南井正弘】

 正式発売が7月1日であり、厳密には2016年上半期発売モデルではないが、筆者を含むメディア関係者向けのプレビューが6月29日に行われ、その場でトライオンできたので、参考までに紹介するのがアシックスのダイナフライト。

 このランニングシューズの最も大きな特徴はミッドソールにフライトフォームという従来のミッドソール素材E.V.A.(エチレンビニールアセテート)よりも55%軽量であり、素材に添加した繊維がアシストすることで優れたクッション性と耐久性を発揮するニューマテリアルを使用した点。

 実際に履いてみるとまずその軽さに驚き、走ってみると心地よい反発性を感じることができた。そのクッション性を言葉で表すなら「粘りのある足回り」といった感じで、従来のアシックスのシューズにはない履き心地であり、攻めの走りを体感することができた。特にペースをkm/5分より速くした際に、無理なくスピードに乗れる感覚を味わえ、このシューズのパフォーマンス性能の高さを体感することができた。

読者のシューズ選びの一助になれば

 今回6+1の計7足をピックアップしたが、これらランニングシューズは筆者が2016年の上半期に特に気に入ったモデルであり、あくまで自分の脚力や足型にマッチしているということも選定理由のひとつなので、ランのタイプやレベルによっては、これらのモデルが向かない読者もいるかもしれないが、今シーズンリリースされた数あるランニングシューズのなかで特に機能性が優れているシューズであることは間違いない。読者のシューズ選びの一助になれば幸いである。

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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