海外での葛藤を乗り越えた久保裕也 代表への強い思いを胸にリオ五輪へ

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「日本代表のために」という感情がすごくある

リオ五輪最終予選でチーム最多の3ゴールをマークした久保(11番)。「僕が成長していけば必然的にそこにいくと思う」と、A代表への想いを語った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――チームと代表ではやっているサッカーが違うと思います。代表では海外組ということで他の選手よりも難しい部分もあると思いますが、この世代で海外組としてチームに合流するときに意識していることなどはあるのでしょうか?

(南野)拓実のところ(=レッドブル・ザルツブルク)もそうですし、僕のところも前からガンガンにプレスをかける守備のスタイルでやっていて、テグさん(手倉森監督)の場合はわりと引いてブロックを作ってということをやっているので、合わせてやらないといけないです。そういう部分は、本番の試合で何回かやっているのと、練習だけ合流して「はい試合」というのではやっぱりちょっと違う部分があります。僕は五輪予選の前に石垣(の合宿)から参加していてスムーズに入れた気はしますけれど、そこの難しさはあるかなと思っています。

 でもよく知っている奴が多いので。原川(力=京都サンガF.C.ユースで同期)はもちろん、奈良(竜樹)とか、櫛引(政敏)とか(遠藤)航君とか大島(僚太)君とかもU−19(の代表)でもやっているし、タク(浅野拓磨)とか(南野)拓実もよく知っていますし。

――チームの雰囲気はいいですか?

 割と静かですよ。落ち着いているというか。タクとか拓実とかあの年代が結構喋るなというくらいで。試合前のバスの中とかは結構静かです。でも後ろの席の奴らはうるさい。タクとか岩波(拓也)とか(鈴木)武蔵とか、あの辺が中心になって(話している)。植田(直通)が毎回いじられていますね。岩波とか、トヨ(豊川雄太)とか植田がいじられキャラです(笑)。僕は見ているだけですけどね。

――そんな同世代の選手の中から、浅野や遠藤がA代表に呼ばれ出しています。やはり意識しますか?

 いろいろな人にそう言われますけれど、彼らは彼らですので。僕が成長していけば必然的にそこ(A代表)にいくと思います。それはそれで刺激を受けますが、プラスにいくと思います。

――現時点でロシアワールドカップ行きへのビジョンはありますか?

 そこもチームとリオで活躍すれば絶対に入れると思っています。そこがないと絶対に入れないだろうし、ビジョンというよりはそういったイメージがあります。目先のことしかあまり考えていないです。

――2012年には当時のアルベルト・ザッケローニ監督に呼ばれてA代表に入った経験があります。その時の経験で何か得たものはありましたか?

 何も経験していないですよ。試合にも出ていないですし。ただA代表の雰囲気というのを味わっただけです。やっぱり試合に出ていろいろと感じるものがあると思うし、練習をやるだけじゃたいしたことなかったですね。もちろんそこはずっと目指しています。でも今はとりあえず五輪代表。五輪のことしか考えていないですね。

――海外でプレーしている分、日本代表への想いも強いのでは?

 日ごろから日本を代表しているという意識は高いですね。スイスでも「日本人の誰々」って見られるし、なんなら「日本人」としか言われない時もある。そういうことを言われ続けると、スイスのチームでの日本代表という感覚で常にいます。だから日本代表とかに選ばれるのもより一層燃えるというか、「日本代表のために」という感情にはすごくなりますね。なので、五輪だからというわけではなく、毎試合代表に選ばれるときは僕にとってすごく大事です。熱くならないとおかしいでしょ、っていうぐらいの感覚です。

予選は割り切ってやっていた

――この世代の代表チームはずっと「勝てない世代」という言われ方をしてきたと思います。五輪最終予選で結果を残し、アジア1位になりましたが、大会前と後で気持ちの変化などはあったのでしょうか?

 大会前は周りからすごくいろいろと言われていた。多分僕以外にもいろいろな選手が聞いていたと思うし、みんな嫌でも気にしていたと思います。でも勝っていくうちにそういう声も気にならなくなった。最初から集中はしていましたけれど、より気にせずスムーズにできるようになっていった気がします。

――ちょっと厳しい言い方かもしれないですけれど、本大会に向けたオーバーエイジの候補にFWの名前がずっとあがっていました。そういったことを聞いていて、どのように感じていますか?

 それは周りが決めることです。必要なら必要でいいんじゃないって思います。僕が選ばれたら僕がやれることをやるだけですし、監督とかがオーバーエイジを必要だって言うのならどうぞというか、そこにとやかく選手が言うことではないと思ってます。

――あらためて、手倉森監督に求められている部分はどこですか?

 やっぱり点を取ることと、守備のこともしっかりチームで合わせて求められます。割とシンプルですね。でも試合になると予選のときも守備の(指示の)方が多かったですね。

――五輪最終予選の時は、もう少しゴールに近い位置でプレーしたいという気持ちもあったのではないでしょうか?

 大分遠かったですね。チームのときは常に前で待っていれば勝手に後ろが運んでくれるし、真ん中にいればサイドからもクロスを上げてくれる。低い位置でプレーすることがまずないです。でも代表は、予選で苦しい場面が多かったので自分が引いてそこからまた前に出てという形になり、常にゴールとの距離は遠かったので難しかったです。でもそこは割り切ってやっていました。

――堅守速攻のシーンが目立った印象ですが。

 そうですね。割とみんなでカウンターみたいな感じのサッカーになっていましたけれども、テグさんのサッカーはもともとそうかなと思います。それが結構みんなに浸透していたし、うまくいったかなと思います。

五輪は自分を磨いていくチャンス

久保は「自分の納得するプレーをしたい」と五輪への抱負を語った。自身を磨き、羽ばたく場とすることができるか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――キャリアにおいて、リオ五輪はどのような位置づけなのでしょうか?

 サッカー選手の中でも五輪というのは一生に一度しかない。ターニングポイントじゃないですけれど、大事なところだと思っています。自分のプレーがどこまで通用するのかも含めて、すごく楽しみです。もっと自分のプレーを出して、楽しみたいなと思っています。

 僕はまだ代表では世界を感じていない。アンダー世代も含めて初めてリオで世界とやれる。だからやってみないとどのぐらいの感じなのか、どのぐらい差があるのかとか分からないんです。

――ずばり本大会での目標は?

 個人的には予選ではあまり自分を出せなかったので、自分の納得するプレーをリオではしたいと思います。

 試合の状況にもよりますけれど、やっぱり思い切りのいいプレーをしたいですし、とにかく点も取りたいですし、結果を出したいというのがあります。一番は楽しみたいです。リオという場を。硬くならずに楽しめたらいいかなと思っています。

――手倉森監督からの信頼を感じているからこそ、楽しみたいという言葉が出てくるのでは?

 テグさんみたいな監督の下でやるんだったら自分が一番自由にできるというか楽しめるんじゃないかというのはイメージしています。がちがちに選手を固めるわけではないので。そういうチャンスを生かさないといけないなと思います。信頼されていて自由にやらさせてもらっている分、堅くなる必要もないですし、思い切りやれるんじゃないかなと思っています。がちがちに固められるとやっぱりプレーの幅も減るし、見ていて面白くないと思うし、やっている方も面白くない。

――それは、これまでのプレーに満足していないということですか?

 例えば、ドリブルひとつにしても相手の股を抜いてやろうというプレーもあんまりなかったと思う。1対1を仕掛けたりする場面があまりなかったかもしれないですけれど、ぱっとひらめいてやるようなプレーというのはこれまであまりなかった。スイスリーグでの自分のプレーを見ていても、あんまり面白くねえなと思って見ています。次のプレーこうするだろうなっていうのが見ていて分かるし、パターンが決まっているなと思って。意外性がないというか、だから相手を抜けないんだろうなとか考えています。だからもっと頭を柔軟にして、型にはめられていないプレーをしたいなと思っています。五輪はそういうプレーを自分で磨いていくチャンスだと思います。やっぱり自分もやっている以上は楽しみたいので。

(取材・文:澤田和輝)

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