ビーチバレー界に必要な発掘と環境整備 2大会連続で五輪行きを逃した日本女子
今大会、日本代表として臨んだ西堀・溝江組(左/1が西堀)と村上・石井組(右)。3位決定戦で敗れ、リオへの切符をつかむことはできなかった 【写真/ビーチバレースタイル】
1996年のアトランタ五輪で正式競技となった以降、日本のビーチバレーボールが五輪出場権を男女ともに逃したのは、初めて。女子は08年の北京五輪以降、2大会連続で出場権を逃す結果となった。
閉ざされたリオ五輪への道
4年前の同大会で敗れて悔し涙をのんだ西堀と溝江はロンドン五輪後にペアを結成し、13年以降、自費で世界を転戦。14年の秋には「FIVBワールドツアーマンガウングオープン」で準優勝。その後、トヨタ自動車への所属が決まると、15年ワールドツアーグランドスラム横浜大会で初の9位となり、世界の階段を一段ずつ上ってきた。
一方、今大会第2代表チームとして出場したのは、村上めぐみ(オーイング)・石井美樹(湘南ベルマーレ)組だ。V・プレミアリーグから転向した石井の成長と比例するように、石井・村上組は16年アジア選手権で3位入賞を果たし、確実に進化を遂げていった。
2ペア「1チーム」として戦う国対抗戦方式のコンチネンタルカップで与えられる五輪出場権は、優勝チームのみ。2位、3位は7月の世界最終予選へまわることになる。日本は準々決勝で宿敵・タイに勝利したが、準決勝でオーストラリアに敗れ、3位決定戦で中国に完敗。この時点でリオへの道は閉ざされた。
西堀は、「この3年半、苦しいことも楽しいことも乗り越えて、ずっと勝てると信じてやってきたけれど、五輪は近いようで遠い……」と、涙に暮れた。
日本に足りなかったもの
大型化が進んでいるアジアの中で、日本は「サーブ」という先手を仕掛ける必要がある 【写真/ビーチバレースタイル】
「オーストラリアや中国のように、身長190センチを超えるブロッカーがいるチームには、当然“高さ”では負けてしまう。けれども、自分たちがサーブで相手を崩して、ディフェンスでプレッシャーをかけていくことができれば、相手の“高さ”を崩すことができる。そのために日々練習を積み重ねてきたが、自分たちが崩されてしまい、相手を崩す力がまだまだ足りなかった」
村上がいうプレッシャーとは、つまり「サーブ」という先手を仕掛け、「相手を考えさせ、迷わせてミスを誘うこと」である。この3年半、ワールドツアーを転戦してきた中で、ロシアやスイスなどの大型チームに勝利してきた溝江も同じことを痛感している。
「“高さ”を補うには、普通にやっていては勝てない。私たちは、相手が考えていることを逆手にとって、ディフェンスの作戦を組み立てて戦ってきた。コンディションがめまぐるしく変わっている中で、相手の心理を読み取り、2人の意志を共有して作戦にズレがないようにしなければいけないし、苦しい場面でも考えていることを実行できるフィジカルが必要になってくる。その能力があれば十分勝機はあるけれど、今大会は大型チームに対して上回ることができなかった」
上背がない者の最大の武器である「サーブ」においても、日本は試合によって調子の波があった。西堀は言う。
「サーブが走っているときは点がとれている。でも、いいサーブを狙うとミスも多くなるし、劣勢のときはミスをしてはいけないという気持ちからサーブが弱くなる。どんな場面でもサーブの確率を上げていくことが、大型のチームに勝っていく必須条件だと思う」
準決勝の中国戦の第1試合。西堀・溝江組が第2セットを奪って1−1とし、フルセットゲームに持ち込んだが、最終セットは3−15と完敗した。中国の強いサーブにレセプションを崩された西堀・溝江組は、15点の間に4連続失点を3回繰り返し、ブレークしたのはわずか1本のみ。その後、さらに3連続失点で敗れ去った。
女子ビーチバレーボール日本代表の牛尾正和監督は、「この“数字”がそのまま、今の日本と中国の差を表している。あの局面でいかにサーブを強く打てるか、変化を起こしていくことができるか、できないかが、強いチームとの差」と敗因を語った。体格差があるからこそ、身に付けなければいけないすべ、発揮しなければいけない能力を日本は積み上げてきたが、大型チームに対してその能力は及ばなかった。