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ユーロ最小国、アイスランドの奇跡
「現実となったおとぎ話」の背景

選手たちのチームワークと組織力が強み

キャプテンのグンナルソンは元ハンドボール選手。ロングスローという武器も持っている
キャプテンのグンナルソンは元ハンドボール選手。ロングスローという武器も持っている【写真:ロイター/アフロ】

 アイスランドの強みは、チームとしての組織を重視するコレクティブなプレーと、ハードワークの精神、不屈の魂だ。技術面での要は、27歳でキャプテンのアーロン・グンナルソン、G・シグルズソンという、共にウェールズでプレーしているボランチペアである。彼らの4−4−2は、予選でも本戦でも効果を発揮した機能的なシステムなのだが、このシステムの回転軸が、上記のグンナルソン&G・シグルズソンなのだ。


 彼らは互いに補い合いながら、非常に息のあったプレーをしており、G・シグルズソンはチャンスでは自由に前にも行く役割につく。G・シグルズソンは以前ウイングやセカンドアタッカーとしてプレーしていたが、中盤中央で守備的なグンナルソンと組むようになってから、より力を発揮するようになった。ユーロ予選でも6ゴールと2本のアシストを記録。アイスランドの攻撃の動きのほとんどは、このG・シグルズソンを通じて仕掛けられる。彼は、ミドル(やロング)シュートでゴールも脅かしつつ、守備にも奮闘する。


 また元ハンドボールの選手だったグンナルソンには、ロングスローという必殺の武器もある。実際彼のスローインは、対オーストリア戦での先制ゴールの起点となった。


 そして彼らの次に鍵を握るのが、両ウイングをこなせるビャルナソンだ。技術的にも優れ、ゴールチャンスを生みだすためのビジョンを持つ彼は、対ポルトガル戦で得点し、オーストリア戦では、怒とうのドリブルで、トラウスタソンの勝ち越し点のための完璧な御膳立てをした。


 彼らの4−4−2の鍵は、すべての選手が、守備的努力をすることだ。この「みんなで守り、みんなで攻める」コレクティブなプレー、ハードワークと自己犠牲の精神は、本戦の3試合を通し、チームの武器であり続けた。


「個々の選手の才能で劣るなら、コレクティブに、しっかり組織することで対抗するしかないのは明らかだ。そして皆がハードワークし、1人1人が通常以上の追加的力を少しずつ絞り出す」とラーゲルベック監督は言う。「勝つチームというのは、その試合で何をしたいかについて、クリアな考えを持っている。だから私は何をすべきかをこの上なく明瞭にし、それを選手たちに伝える。だから選手たちは、毎試合、何をすべきかを明確に知りつつプレーしているのだ」

イングランド戦に一層燃える選手たち

 今、唯一確かなのは、次の対イングランド戦で勝っても負けても、アイスランドは精いっぱい戦った誇りを胸に、ピッチを後にするだろうということだ。


「イングランドを苦しめるには、自分達のやり得る最高の試合、完璧な試合、われわれの人生最大の試合をしなければならないだろう。そしてそうできたとしても、勝てるかどうかは分からない」とハルグリムソン監督は言う。


 しかし彼らにとって、それは心配事ではなしに、わくわくすることであるようだ。アイスランドは、予選でオランダに2度、そしてトルコとチェコにも勝っておきながら、親善試合ではユーロ本大会行きを逃したチームにさえ負けている。そのこころは、強い相手に燃えるチーム、ということらしいのだ。


「われわれの武器はファイティング・スピリット。そしてわれわれは、ここまで強い相手と戦ったときに最高の試合をしている。良いことは、ユーロには強い相手しかいない、ということだ」と言ったハルグリムソンは、ちょっぴり微笑んだ。


 また、国でプレミアリーグのテレビ放映があるため、皆がイングランドの選手についてかなりよく知っているのだという。


「イングランドは、僕にとって夢の対戦相手だ」と、オーストリアに対し先制ゴールを決めたFWのヨン・ダディ・ボドバルソンも言う。「僕は若かったころ、国でユーロやワールドカップをテレビで見て、いつもイングランドを応援していた。彼らと会えるなんて夢みたいだ!」


 そしてG・シグルズソンは、こう言って夢の続きを願った。


「僕らは今、(ベスト)16に残った。開幕前に誰かがそう予言したら、頭がおかしいのではないかと思っただろう。でも、そうは言っても心のどこかで、僕ら自身、できるのではないかと信じてもいた。これは、素晴らしい物語だ。そして僕らは皆、進み続けたいと思っている。まだ家には帰りたくないんだよ」

木村かや子

東京生まれ、湘南育ち、南仏在住。1986年、フェリス女学院大学国文科卒業後、雑誌社でスポーツ専門の取材記者として働き始め、95年にオーストラリア・シドニー支局に赴任。この年から、毎夏はるばるイタリアやイングランドに出向き、オーストラリア仕込みのイタリア語とオージー英語を使って、サッカー選手のインタビューを始める。遠方から欧州サッカーを担当し続けた後、2003年に同社ヨーロッパ通信員となり、文学以外でフランスに興味がなかったもののフランスへ。マルセイユの試合にはもれなく足を運び取材している。

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