ベルギーが見せたカウンターへの転身 イタリア戦の完敗から立ち直り、決勝Tへ
イブラヒモビッチが会見で言い放った「ラストメッセージ」
イブラヒモビッチはベルギー戦の前日会見の席で、ユーロを最後に代表を引退することを発表していた 【Getty Images】
ベルトは挑発するような質問で、相手をイライラさせながら、本音を引き出すのがうまいレポーターだ。イブラヒモビッチを前に、いつもより丁寧な口調だったが「ちょっとネガティブな質問で悪いんだけれど、この試合がスウェーデン代表の最後の試合になったら残念じゃない?」と切れ込んだ。
すると、イブラヒモビッチは「英語で話す。これが俺のラストメッセージだ」と前置きして、こう言い放った。「スウェーデン代表がユーロで負けたら、その試合が俺の最後の代表マッチになる。自分は五輪に参加しない」と――。このニュースは瞬く間に世界へ広がった。
現役時代、ベルギー代表の闘う象徴であったマルク・ウィルモッツ監督は、2002年ワールドカップ(W杯)を最後に代表から退く覚悟で大会に臨んだ。不思議なファウルをとられてしまったものの、決勝トーナメント1回戦でブラジル相手に多くの人の記憶に残るオーバーヘッドシュートを決めたことがある。ウィルモッツ監督は、自身の経験から「スウェーデンはズラタンのために一丸となって、ベルギー相手に挑んでくる」と警戒を強めていた。
幸運なベルギーがスウェーデンに勝利して2位通過
ベルギーはグループステージ第3戦でスウェーデンに勝利し、2位通過 【写真:ロイター/アフロ】
試合がカウンターの応酬となり、イブラヒモビッチにもスペースが生まれて、素晴らしいスルーパスを出したシーンがあったが、受け手のマルクス・ベリのトラップが大きくなりチャンスを逃す。「これが逆となって、受け手がイブラヒモビッチでなくて良かった」というのがベルギー人の本音だった。
終盤、幸運がベルギーに味方する。63分、イブラヒモビッチのシュートがついにゴールネットを揺さぶったが、その直前にベリが危険なプレーをしたとしてゴールは取り消された(ベルギーの全国紙『ヘット・ラーツテ・ニウス』は「不当な取り消し」と表現している)。83分、アンドレアス・グランクビストのシュートは、ゴールラインを越しそうになったが、ケビン・デ・ブルイネがクリアした。その1分後、ナインゴランのミドルシュートは相手に触れて、あり得ない軌道を描いて決まる。ベルギー、先制。
結局、このナインゴランのゴールが決勝点となった。ベルギーはスウェーデンに辛勝し、グループステージを2位通過。ベルギーサポーターが「祭りはどこだ? 祭りはここだ!」と勝ちどきを上げる。これが代表最後の試合となったイブラヒモビッチがロッカールームへ引き上げようとすると、そっとウィルモッツ監督が健闘をたたえに近寄り、2人はガッシリと抱き合った。