誤審騒動連発 もう審判はいらない!? カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

検討すべき「チャレンジ」導入

 ただし、何から何まで抗議されるがままにビデオ判定を行えば、さすがに時間的な円滑さは損なわれます。そこで検討すべきはMLBで2014年から導入されたような「チャレンジ制度」でしょう。

 MLBはそのためにビデオ判定用のスタジオをニューヨークに新設し、全試合のビデオ判定を一括管理。各監督には6回までに1度、7回から試合終了までに2度の異議申し立てを認め、ボール、ストライクの判定以外は全てのプレーが対象になるという徹底ぶり。このあたりのスケールの大きさは、さすがメジャーと言わざるを得ません。

 日本で全く同じことが可能とは言いませんが、それに近いことを模索すべきなのはないでしょうか。過度のビデオ判定は審判の尊厳を損なうという意見もありますが、審判の判定が正しいケースが多ければかえって威厳も保たれるのですから。

審判は消滅する仕事?

 過度な機械化、デジタル化を進めると、「それじゃいずれ審判が不要になってしまう」という意見があります。しかし「可能な限り正確にプレーをジャッジし、試合を円滑に遂行させること」という、そもそもの目標が実現するのなら、それで良いのではないでしょうか。 

 「誤審も含めて野球はおもしろい」という牧歌的なノリは決して嫌いじゃありません。人間のミスから生まれる感動的なドラマもあるでしょう。また「選球眼の良い落合博満が打席で悠然と見逃せば、ストライクもボールと判定された」などの伝説も、確かにしびれます。

 しかし、例えばストライク判定の自動化により投手の数センチ単位のボールの出し入れを堪能できたほうがもっともっと面白いかもしれません。そう、この「もっと面白い」という視点が大事。それらはプロ野球でしか提供できない特別なエンターテインメントに成り得るのです。

 ドライな言い方で恐縮ですが、審判という職業もコンピュータ技術の発達で消滅してしまう仕事のひとつかもしれません。しかしそれを「不幸」だと捉える必要性は、まったくないのです。

 セイバーメトリクスという科学的アプローチで野球の楽しみ方の奥行きが広がったように、判定にも最新技術を導入してほしい。そして“より面白い未来の野球”という可能性をどんどん追求してもらいたい。そんな風に僕は願っています。

 審判がみんないなくなり、ぽっかり空いた球審の位置でドアラがずっと著書の宣伝をしてるとかはイヤですけどね。

2/2ページ

著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント