宮西、中崎雄らサイドスロー左腕の生き様 腕を下げて切り開くプロでの未来

週刊ベースボールONLINE

松井秀喜氏に絶賛された公文の進歩

“ポスト山口鉄也”を期待される巨人・公文。春季キャンプでは松井秀喜臨時コーチに「嫌がる左打者は多いと思う」と絶賛された 【写真=BBM】

 プロで生き残るために、“腕を下げた”若き左腕たちも奮闘している。“ポスト山口鉄也”と期待されるのが公文克彦(巨人)だ。昨オフにスリークオーターからサイドに転向、「左打者は絶対に抑えたい」と左キラーとなる覚悟を示した。春季キャンプでは松井秀喜臨時コーチに「嫌がる左打者は多いと思う」と絶賛されたが、開幕後はスリークオーターよりも、ややヒジを下げた位置に。

 だが、公文の最大の特徴は腕の位置だけではない。松井コーチが嫌がったのも、実は極端にインステップするその踏み込み。左打者を目掛けて踏み込むため、ストレートには大きな角度がつき、左打者にのみならず右打者にとっても厄介な投手である。今季は12試合に投げて、6月2日に2軍降格となったが、まだ発展途上の投手。14年、15年は1軍登板ゼロを考えれば、大きな進歩だろう。

自己最多登板を更新中の竜の左キラー

昨年から左サイドに転向すると、今季は飛躍的に1軍登板数を増やし、左打者を1割台に抑え込んでいる中日・小川 【写真=BBM】

 昨季途中にオーバースローからサイドスローへ転向し、飛躍のきっかけをつかんだのが小川龍也(中日)だ。入団5年目の14年までは通算10試合の登板にとどまり、その年のオフに左ヒジの遊離軟骨除去手術を受けた。心機一転して迎えた15年シーズンだったが、4月11日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(神戸サブ)で打者1人との対戦で安打を許し、大胆なフォームチェンジを決断した。

「実は3年目くらいからサイドにしたほうがいいかもしれないと思っていました。あの試合でもう限界かなと思って決めました」
 今季は初めて開幕1軍をつかむと、主にワンポイントとして自己最多の登板数を更新中。対左打者の被打率は1割9厘と役割を果たしているが、「左だけじゃなく右も抑えられる投手を目指す」と意気込んでいる。

テレビから消える!?中崎雄の大胆改造

背水の陣で迎えたプロ8年目の今季、テレビ画面から消える大胆なサイド投法へ転向した西武・中崎。 【写真=BBM】

 テレビ画面から消える――。今季、その投球で話題を集めているのが中崎雄太(埼玉西武)だ。打者に背番号「46」が見えるほど、背中を向けたセットポジションから、体を倒しながら一塁側へ右足を踏み出して横から投球。その後、一塁方向へ2、3歩ステップするために、テレビ画面で見ると左へ“消えて”しまうのだ。

 2009年、日南学園高からドラフト1位で西武入団。2歳下の弟は広島でクローザーを務める中崎翔太だ。期待されながらも芽が出ず、1軍登板を果たしたのは13年の7試合のみ。昨年8月には左手中指、人さし指、手のひらの血行障害の手術を受けた。背水の陣で迎えた8年目の今季、意を決し、3月中旬にサイドスロー転向を果たした。「上でやるには横からのほうがチャンスがある」。幸い、2軍投手コーチには現役時代、サイド左腕として鳴らした清川栄治氏がいた。

 歩みだした左キラーへの道。昨季、イースタンで対左の成績は43打数8安打で被打率は1割8分6厘。今季は22打数2安打、9分1厘と成績も向上し、5月12日に1軍昇格。現在は6試合に登板して防御率は4.15だが、左打者は8打数1安打、打率1割2分5厘と抑え込んでいる。果たして今後、この投法をどこまで自分のモノにできるか。自身の名は“消える”ことなく、球史に名を刻みたい。

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