2年連続でロサンゼルスマラソンを走って 幅広いランナー層が気に入る最高の大会

南井正弘

スポンサー変更の影響は?

ゼッケンの受け渡しを行うエクスポ会場には契約選手のメブ・ケフレジギとカラ・グーカーをフィーチャーしたスケッチャーズパフォーマンスの巨大なアドボードが掲示されていた。ちなみにメブ・ケフレジギは男子2位でリオデジャネイロ五輪の出場を決めたが、カラ・グーカーは女子4位に終わり涙を呑んだ。 【南井正弘】

 オリンピックトライアルをしばらく観戦した後はゼッケンの受け取りのためにステープルズセンターのロサンゼルスマラソンエクスポ会場へ。ちなみにこの建物はNBAのロサンゼルスレイカーズの本拠地としても知られる。

 第31回となる今回からタイトルスポンサーがアシックスからスケッチャーズパフォーマンスへと変更になり、正式名称は「スケッチャーズパフォーマンス ロサンゼルスマラソン」となった。スケッチャーズというと日本での知名度はまだまだだが、アメリカにおけるカジュアルシーンではナイキに次ぐブランドとなっているポピュラーな存在で、スケッチャーズパフォーマンスは同ブランドのランニングなどスポーツ用途のプロダクト群を指す。契約アスリートでは男子マラソンのアテネ五輪銀メダリストでロンドン五輪の同競技でも4位入賞したメブ・ケフレジギが最も有名。彼は2014年のボストンマラソンで優勝するなど、スケッチャーズパフォーマンスのランニングシューズで優秀な成績を収めている。

 ゼッケンを受け取り物販エリアへと移動すると、最初に訪れることになるのが、スケッチャーズパフォーマンスのコーナー。オフィシャルスポンサーだけに大きな面積を占めているが、昨年のアシックスと比較すると商品量は少な目。買い物客も若干少ない気が。商品自体はロサンゼルスマラソンらしいポップな雰囲気をフィーチャーしていて悪くないと思ったが、このあたりのマーチャンダイジング力はやはりアシックスに一日の長があることは認めざるを得ないだろう。

 スケッチャーズパフォーマンスでTシャツなどいくつか買い物した後に他ブランドのエリアへと移動する。こちらでは最近アメリカでも勢いを急速に増しているOnなど新興ブランドが存在感を見せており、ナイキやアディダスなど大手ブランドはブース自体の出展を控えていた。エクスポを訪れた段階でもアシックスからスケッチャーズパフォーマンスへのタイトルスポンサーが変更されたことによって、これまで以上にポップな印象のロードレースになったことが感じられた。

参加賞Tシャツはスタートのドジャースタジアムからゴールのサンタモニカまでの地名をプリント。ボディはスケッチャーズパフォーマンス製の吸汗速乾タイプで、レース当日着用していたランナーもチラホラ。 【南井正弘】

今回のオフィシャルアパレルで個人的に一番カッコいいと思ったシングレット。エメラルドグリーンのカラーリングはブラックのショーツやタイツとベストマッチ。 【南井正弘】

ストレッチ素材のランニングジャケットは希望小売価格78ドルがセールで40ドルになり、土曜日は全品25%OFFとのことで、最終的に30ドルに! 【南井正弘】

昨年までのアシックスと同様に限定シューズもラインアップ。ポップなデザイン&カラーコンビネーションがロサンゼルスマラソンらしい。 【南井正弘】

アップダウンが多くて記録は出しにくい

日本料理屋が立ち並ぶリトル東京もロサンゼルスマラソンのコースに含まれる。 【南井正弘】

 昨年は最高気温が摂氏32度まで上昇する厳しい気象条件が予想されたためにスタート時間が7時25分から30分早められ、6時55分となったが、今年もスタートは6時55分に。本来2月、3月の平均最高気温は20度ほどで過ごしやすいはずなのだが、今年も最高気温は摂氏28度と厳しい気象条件が予想されていた。

 宿泊していたダウンタウンのミレニアムビルトモアホテルから徒歩3分ほどのバス発着所からスタート地点のドジャースタジアムまでのシャトルバスに乗り込む。20分ほどで到着するが、まだ日の出前ということで暗く、気温も摂氏10度前後で肌寒い。ドジャースタジアムの座席やコンコースが開放されており、そちらで暖を取るランナーも少なくない。

 車いす部門が6時30分にスタートした後、エリート女子が6時45分、エリート男子と一般の部が6時55分にスタート。筆者は後方からのスタートだったが、号砲からのタイムロスは6分ほど。2万人以上が参加する大会としては短いほうである。スタートからしばらくすると太陽がしっかりと顔をだし、さっきまで寒かったのが嘘のよう。この大会は昨年経験して思ったのは「結構アップダウンが多くて記録は出しにくい」ということ。特に7kmに差し掛かる位置にある急坂はかなりの斜度で、初めて参加したランナーは驚くことになる。ここでありがたいのが和太鼓の応援で、筆者は2年連続彼らの演奏のおかげで歩くことなく、序盤の難所を克服することができた。

7km地点の急坂でランナーを鼓舞してくれた和太鼓の応援隊。日本人ランナーのみならず、彼らの応援に感謝するランナーは少なくないはず。 【南井正弘】

豪華なコース設定はNYにも負けていない

ハイタッチによる応援でランナーにエネルギーを注入する青年たち。 【南井正弘】

 ダウンタウンを抜けるとシルバーレークなどの新興スポットを抜け、誰もが知る観光スポットエリアへと突入する。

 まずアカデミー賞の授賞式で知られるドルビーシアターやスターの手形で知られるチャイニーズシアターのあるハリウッド。ロサンゼルスマラソンはこれら著名スポットの前を走ることができるのだ。さらには世界屈指の高級ブティック街であるビバリーヒルズのロデオドライブもコースに含まれるという豪華なコース設定。このゴージャスなコースマップは世界一の市民マラソンの名をほしいままにするニューヨークシティマラソンにも負けていない。実際に走ってみるとわかるが、ニューヨークシティマラソンは五番街やマジソンアベニューのような著名な通りを走ることはないのだ。

 そしてもうひとつのロサンゼルスマラソンの魅力は充実したエイドステーション。オフィシャルのドリンク&フードステーションだけでなく、私設のエイドステーションが無数に存在しており、その充実ぶりはニューヨークシティマラソンを凌ぐレベル。日本人ランナーにとって特にありがたいのは37km前後にある日本人商工会のエイドステーション。ここではあんぱんやヤクルトといった日本人ランナーには本当に嬉しいものを提供してくれ、筆者もここでしっかりと栄養を補給しつつトイレも済ませ、最後の5kmほどを快適に走ることができた。

今年も気温が上昇したので、こんな感じの放水サービスはありがたかった。 【南井正弘】

アカデミー賞の授賞式が行われることで知られるハリウッドのドルビーシアター。 【南井正弘】

スターの手形が埋め込まれることで知られるチャイニーズシアター前もコース上にある。 【南井正弘】

小さな子供たちも積極的にボランティアに参加。 【南井正弘】

疲れたカラダに染み渡るオレンジ。なぜかターバンを巻いた男性が配布していることが多かった。 【南井正弘】

ドラッグクイーンと写真を撮るランナー。この大会は走っていて本当に飽きない。 【南井正弘】

ロデオドライブのブルックスブラザーズ前を走るランナーたち。世界屈指の高級ショッピング街もロサンゼルスマラソンのコースの一部だ。 【南井正弘】

チアガールたちの応援もランナーにはありがたい。真剣にチアリングする者とスマホに夢中になっている者の温度差があるのもアメリカらしい(笑) 【南井正弘】

エナジージェルは二か所で提供された。ニューヨークシティマラソンではENERGY BARがスポンサーだったが、ロサンゼルスマラソンはCLIF SHOT。 【南井正弘】

私設エイドによるアイスキャンディ。今年も気温が上昇しただけに本当に嬉しい差し入れだった。 【南井正弘】

今年も30km過ぎで発見したビールの私設エイド。筆者は飲まなかったが、ランナーが美味しそうに飲み干すのを見るのは目の毒。 【南井正弘】

37kmエリアにあった日本人商工会のあんぱん。疲れているときの甘いものは最高! 【南井正弘】

昨年に引き続きヤクルトのエイドステーションも日本人ランナーにとっては嬉しい存在。 【南井正弘】

初の海外マラソンにもオススメ!

ゴールも世界的に著名な観光地のサンタモニカ。Stadium to the Seaがロサンゼルスマラソンのキャッチフレーズだが、スタートからゴールまで本当に豪華なコース設定だ。 【南井正弘】

 ゴールは日本人にも知名度の高いサンタモニカ。ここで完走メダルを受け取り、スペースブランケットともエマージェンシーシートとも呼ばれる断熱シートを掛けられるが、気温が28度ほどの状況ではすぐに脱ぐランナーがほとんど。それにしても2年連続30度前後の気象条件での開催となったが、20度くらいで走れたら本当にこの大会は最高だと思う。世界的な観光地を巡るコース設定、日本からの飛行機のアクセスもよく、開催時の航空券も高くない点、ホテルのキャパシティが十分でリーズナブルな点etc. 初めて海外マラソンに参加するランナーから、すでに海外マラソンを経験済みのランナーまで幅広い層に気に入ってもらえるレースだと思う。

 去年は有森裕子さんらと一緒でメディアツアーとして参加したので貸切自動車による移動だったが、今年は個人手配で行きも帰りもシャトルバスを利用した。最初はバス停の位置までスムーズに到達するか不安だったが、特に迷うこともなく問題なく利用することがきた。これならある程度旅慣れていて「ツアーは参加したくない!」といったランナーにもオススメできる。ロサンゼルスマラソンには日本語ウェブサイトもあるので、来年度のエントリーを考えているランナーは下記をチェックしてほしい。

※リンク先は外部サイトの場合があります

どのマラソン大会と比較しても豪華な完走メダル。走り終わったあとにメダルを掛けたままサンタモニカの街にショッピングに繰り出すランナーも少なくなかった。 【南井正弘】

こちらが裏。裏面もしっかりとデザインされている。 【南井正弘】

2/2ページ

著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント