本職の中継ぎ・秋吉が侍で果たす役割 WBCへ注目集まる権藤コーチの判断

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「走者をかえさない」中継ぎの矜持

おなじみの頬杖をつくポーズで試合を見守った権藤コーチ(左)。侍ジャパンの課題である中継ぎをどう整備するのか? 名投手コーチの手腕が問われる 【Getty Images】

 そして侍ジャパンの16年最初の試合として注目の集まる今回の強化試合、第1戦の8回から秋吉に出番が与えられた。まず7番の陳ヨン基を2球で追い込むと、3球目のスライダーを振らせて三振に仕留める。続く8番・張建銘も2ストライクと追い込んでから外角シンカーで空振り三振。9番・王勝偉も2ボール2ストライクから内角に速球を投げ込み見逃し三振。7番からの下位打線とはいえ、わずか13球で3者三振と最高のデビューを飾った。

 期待に応えた秋吉は試合直後、開口一番「すごい緊張した」と本音を吐く。それでも、「一人抑えてすごい楽になった。初球、ストライクが入ったので安心した」と安堵の表情を浮かべると、「あとはいつも通りに追い込んでからボールになる球で三振が取れたので、自分のピッチングができている」と振り返った。

 さらに、この試合では8回の頭からの登板だったが、自身の起用法については「ランナーがいる場面で登板するのはシーズン中もあったので慣れているし、(回の)頭から行くことも中継ぎとして想定しておかないといけない。その辺は試合の流れ次第だと思うので、どういう状況でもランナーをかえさずに帰ってくるという気持ちで投げたい」と中継ぎとしての矜持を口にした。

第4回WBCの有力候補に

 そんな投手陣の良さを引き出した権藤コーチだが、試合後は「(試合前の)ミーティングでは特に何もしていないですよ」とはぐらかす。それでも自らの役割については「投手自身がこういう試合をすれば勝てると味わってもらうこと。あれだけのピッチャーがいるから気持ちよく投げてもらうこと」と語る。

 来年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けて先発陣の頭数はそろっている。この日投げた菅野、大野、小川、プレミア12で活躍した大谷翔平(日本ハム)だけでなく、けが明けの影響で今回は選出されていない藤浪晋太郎(阪神)も万全ならメンバー入りするはずだ。さらにMLBでプレーする、前田健太(ドジャース)、田中将大(ヤンキース)、今季トミー・ジョン手術から復帰するダルビッシュ有(レンジャーズ)らがいる。

 しかしいくら先発陣が安定していても、球数制限のあるWBCは一人で投げ切ることができない。先発投手2人で序盤の試合をつくっても、プレミア12の韓国戦のように終盤でピンチを背負う場面も出てくるはずだ。WBCを来年に控える今シーズン、権藤コーチが誰を中継ぎとして判断するのか、その動向に注目が集まりそうだ。そして侍ジャパンの16年初戦で最高の結果を残した秋吉も、WBCへの有力候補となったことは間違いないだろう。

(取材・文:山岸耕太/スポーツナビ)

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