1部残留へ、清武に寄せられる大きな期待 ハノーファーで厳しい評価の山口と酒井
現地記者が指摘する山口、酒井の課題
冬に加入した山口に対し、現地記者たちの評価は厳しい 【Bongarts/Getty Images】
「厳しいね」。ハノーファーを見続けてきたティーテンベルクはそう語る。「彼は今のところ、まだブンデスリーガに慣れていない。山口はまず、ドイツのトップリーグのスピードに慣れる必要がある」。パスなど良いものも持っているが、彼にとってブンデスリーガはまだ早すぎるようだ。
テレビ局『スカイ・スポーツ』のユレク・ローンベルクも同意見だ。「彼には少しがっかりした。動きがまるで、機械のようだったからね」。指揮官が同じ意見だったかは分からないが、前半のうちに代えられたこともあった。
「冬期に加入した選手ならば、それに向けてのプランを持っていることが必要になる。半年とまでは言わないものの、3、4カ月は適応には必要だったのかもしれないね。ハノーファーには、助っ人としてやって来たはずなのに。スポーツディレクターのマーティン・バーダーは、焦って動いてしまったのかな」
酒井宏樹も、大きな助けになれていないのが実情だ。このDFは「ファイターであり、ランナー。でも、戦術的な動きはできていない」とティーテンベルク記者は指摘する。他の見方もすることはできるだろう。ただ、看過できないシンプルなポイントがあるという。「クロスがひどい。他にどんなプレーがあろうとも、そこだけはいつもひどいんだ」と、ローンベルクは言い切る。「不安定さも感じられる。とても神経質な選手なのかもしれないね」。
フィリップも「もともと安定感がある選手ではなかったけれども、さらに悪くなっている」と懸念を示す。
残留へ、清武の活躍は欠かせない
「ハノーファーで良いサッカーをプレーできるのは、清武だけだ」とティーテンベルクは言い切る。シャーフ監督が求めるのは、ボールを前へと進めるサッカーだ。まさにシャーフが「前に運べ」と指示するプレーを体現できるのが、清武である。
しっかりボールを止め、前に蹴る。「他の選手にボールを供給するのが、僕の役目です」と、復帰した清武は語っている。まだ100パーセントの状態には戻っていないだろうが、シュトゥットガルト戦前にシャーフ監督は「清武は大丈夫だ。もちろんまだ完了してはいないが、われわれは彼と一緒に復帰に取り組んできたからね」と背番号10に信頼を置いた。チームのベストのパフォーマンスを引き出す引き金として、指揮官は清武を起用し続ける構えだ。清武の判断にかかる部分が大きくなるが、本人は「プレッシャーは感じません」と報道陣を前に明言した。
有言実行。言葉をプレーで表したのが、シュトゥットガルト戦だった。彼の復帰によってハノーファーのプレーも向上し、0−1からの逆転勝利をもぎ取った。その2点をお膳立てしたのが、清武の右足だった。
清武1人だけでハノーファーを救えるわけではない。だが、「清武と他の選手の違いは、誰の目にも明らかだ」とローンベルクは力を込める。相手チームが黙っているわけもなく、中盤の守備的な位置で彼に監視の目を光らせる。清武が沈黙させられれば、ハノーファーのスイッチはオフになる。それでも清武は欠かせない。フィリップ記者は、興味深い数字を示す。
「今季、清武が先発した試合で、ハノーファーは13ポイントを稼いでいる。清武が先発しなかった試合では、勝ち点4しか手にしていない」
時に数字は雄弁である。
ハノーファーは崖っぷちに立っているが、清武に諦めるつもりはない。
「とても大事なことが1つだけあります。僕らは行動し続かなければいけないということです。そうすれば、最後に後悔が残ることはないでしょう。結果が望んだとおりでなくとも、僕らは全力を出し続けなければいけないんです」
プレーのごとく、シンプルに、前を目指している。
クラブ周囲にも、悲観的な見方は広がっている。「希望は見えない。チームはひどすぎる」とロールベルクは正直な心情を吐露する。一方、「もしかしたら、僕には想像力が欠けているのかもしれないね」とティーテンベルクも前を向こうとする。その足りない何かをもたらしてくれるのが、清武なのかもしれない。たとえ少数派であろうとも、ハノーファーを信じ続ける人間は、いる。
(翻訳:杉山孝)