マラソン大会前日のNG行為とは? 青山剛のランニングナビ

青山剛

「がっつりマッサージ」はNG!

【Getty Images】

 よく前日に現地入りした方で、とにかく大会前だから疲労をしっかり抜いたほうが良いと思い、現地の初めて診てもらうトレーナーやマッサージ師さんから「がっつり強めのマッサージ」を受ける方がいます。実はこれは大変危険です。

 普段マッサージを受けたことがある方は感じたことがあるかと思いますが、大抵強めの「疲労回復目的」のマッサージを受けた翌日は、体に力が入りづらく、良い動き、良い走りがなかなかできないものです。
 マッサージ自体は大会前でもとても効果的なのですが、強めのマッサージだと「ほぐれすぎて」大会前日はおすすめできません。ましてや初めて自分の体を診てもらうようなトレーナーやマッサージ師さんだと、加減も分からずなおさらです。

 間違えてほしくないのは、疲労が抜けている状態が必ずしもベストコンディションではないということです。特にマラソンのように長距離を走る場合は、足を含め体の筋肉は程よく疲労感があるくらいが、実はベストコンディションな場合が多いのです。

 同じ理由で、大会前日に疲労回復にと、現地の温泉などで「長湯」をするのも避けたほうがいいでしょう。完全に疲労を抜いてほしいのは、内臓疲労などですので、食べ過ぎやお酒は控え、筋肉疲労は抜けきらないようにしましょう。

「にわかカーボローディング」はNG!

【Getty Images】

 大会前にエネルギーとなる炭水化物を多く取る「カーボローディング」という方法があります。ご飯やパスタなどを多く食べたりするわけですが、これもよほどしっかり計画的にやらないとおすすめできません。
 しかも、大会前日に普段食べないような量の炭水化物を取ると、レース前、もしくはレース中に便意や腹痛が起き、もしくは気分が悪くなり、苦い経験をした方も多いはずです。これでは逆効果です。

 本来のカーボローディングの正しい方法は、大会の約1週間前から4日前くらいまで、強めのトレーニングを行いながら、炭水化物の量を少なくした食事にして一度枯渇状態にし、その後3日くらい前からトレーニングを抑えていきながら、炭水化物の量を多めにした食事にするから、しっかりエネルギーが蓄えられると言われています。
 従って、大会前日だけ、いきなり炭水化物の量を増やすのは効果もあまり期待できず、危険だということです。
 そこで私から安全な「大会前日のカーボローディング」を紹介します。それは、大会前日の3食、そして大会当日の朝食時に「100%オレンジジュース」を飲み物代わりに摂取するのです。
 100%オレンジジュースは糖質が多く含まれ、またビタミンCも豊富。そのため、糖質の吸収も促進され、しかもビタミンCなので体調を整えてくれます。オレンジジュースなら日本、世界各地どこでも手に入るので、お手軽に大会前日から安全なカーボローディングができますので、お試しください。

 大会前日に良かれと思ったことが、実は逆効果だったりしますので、せっかくトレーニングしてきたことを台無しにしないように気を付けましょう!

※本連載「青山剛のランニングナビ」を元にした、マラソントレーニングがすべてわかる書籍(新書)が完成! 最新刊「マラソンで自己ベストを出したいなら、全力で走るな!(洋泉社)」は絶賛発売中です。

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著者プロフィール

元プロトライアスリート。大学時にプロ活動を開始し、1999年世界選手権日本代表に選出される。その後トライアスリート中西真知子選手のコーチとなり、指導者としての活動をスタート。同選手を2004年アテネ五輪出場に導く。現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのコーチとして競技者から初心者、子供、タレントまで幅広く指導。著書に『ランニング・コアメソッド』『DVDパーフェクトストレッチ100』など多数。(社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員 元日本オリンピック委員会・強化コーチ

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