是か非か!? プロ野球「育成選手制度」=インフォグラフィックで検証

ベースボール・タイムズ

最近増えている故障者リスト的扱い

【ベースボール・タイムズ】

 そして近年、育成ドラフト出身者の“シンデレラストーリー”よりも目立つのが、支配下選手の育成再契約である。この育成再契約にも大きく分けて3つのパターンがあり、戦力外一歩手前の「ラストチャンス枠」として契約する場合と、他チームに移籍した場合に多く見られる「リベンジ枠」としての扱い、そしてもうひとつが「リハビリ枠」である。

 現役での具定例を挙げると、「ラストチャンス枠」は野手転向から今季プロ初安打を放った赤坂和幸(中日)、フォーム改造が実った伊藤和雄(阪神)。「リベンジ枠」は移籍1年目から今季59試合に出場した堂上剛裕(巨人)。そして「リハビリ枠」には脇谷亮太(巨人)、近藤一樹(オリックス)、中川大志(楽天)らが、それぞれ手術による長期離脱を考慮して育成契約を結び、戦列復帰後に再び支配下選手として活躍している。

 この中で特に増えているのが、「リハビリ枠」である。これは事実上、MLBの「故障者リスト」にあたるもので、1軍での実績を持つ中堅、ベテラン選手が「育成」の名の下で他の若手と同列に語るには大きな違和感がある。

日本ハムは育成選手ゼロ

【ベースボール・タイムズ】

 これまでの10年間で、育成から支配下登録を勝ち取った選手は計112人(育成ドラフト入団選手57人、支配下経験者36人、外国人選手19人)いる。これを各パターン毎に支配下登録率を割り出すと、いずれも32%〜34%の数字が並ぶ。「育成→支配下」は「3人に1人」だが、この中で1軍の試合に出場した選手は30人に満たない狭き門である。そして今後、各パターン間に大きな差異が生まれて来れば、育成制度の改革は避けられない状況になるだろう。

 今年10月の育成ドラフトでは計28人の若者たちが指名された。大量8人を指名した巨人が新たに3軍の設置を発表するなど、表向きは「裾野の拡大」を謳ってはいるが、実際は安い費用(支度金300万円、年俸240万円)での選手の囲い込みが可能だ。だが、多くの選手は支配下登録を経験せずにユニホームを脱いでいる。

 これまで、育成制度によってプロ入りや復活のチャンスを得た選手がいたことは確かで、その意味では同制度の導入は大きな成果と意義があったと言える。だがその一方で、多くの選手が“育たず”にユニフォームを脱いだ。それを「自己責任だ」と決めつけるのは乱暴だ。例えば、日本ハムは選手の出場機会を確保するという編成方針から育成制度は一度も利用していない。果たして、どちらが“育成”に成功しているだろうか。導入10年、育成制度を見直す良い時期であると思う。

(文:三和直樹、グラフィックデザイン:山崎理美)

2/2ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント