海外遠征に危険が……そのとき母は? 夢を追うアスリート母子の複雑な心境
パリ同時多発テロで苦渋の決断
パリの同時多発テロの影響は、“みう・みま”で知られる平野(左)と伊藤にも降りかかった 【Getty Images】
(1)参加者の安全を第一に考えるべきである
(2)フランスでは3カ月間の非常事態宣言が発令されている
(3)この時期のフランス渡航について大きな不安を感じる選手とその家族がいる
この苦渋の決断に至るまで、協会の中で慎重な議論と検討が重ねられたことは言うまでもない。試合に出たい選手の気持ち、チャンスを与えたいコーチ陣の思い、本来はITTF(世界卓球連盟)や各国のNF(国内競技連盟)と足並みをそろえたい日本の立場もあっただろう。特に今回のメンバーには初代表に選ばれた選手や、高校3年生でこれがジュニア最後の国際大会という選手がいた。
だが無視できないのは選手に危険が及ぶリスクと、わが子の身を案じる家族の心配。とりわけジュニアは高校3年生以下の未成年が対象とあって、選手の親たちは協会の決定を固唾(かたず)を呑んで待った。その中には現地へ応援に行く準備を整えていた伊藤美誠の母と、同じく15歳で伊藤のダブルのペアでありライバルでもある平野美宇(JOCエリートアカデミー)の母もいた。
子を思う複雑な思い「命あっての夢」
伊藤の母・美乃りさん(左)は、世界ジュニアへの日本選手団派遣見送りを前向きに捉えている 【写真は共同】
スポーツ界に見る母親の献身的なサポート。それは選手が最高の状態で試合に臨むためにある。試合に出るわが子の身を案じるようなネガティブな要素に向けられては断じてならないのだ。