侍ジャパン、5連勝で首位通過も… 一発勝負の前に見えた投打の不安
則本が中継ぎで安定のピッチング
ベネズエラ戦で逆転を許し、試合後「通用していなかった」と語った松井 【Getty Images】
とりわけ小久保監督の期待に応える働きを見せているのが、則本昂大だ。米国戦後、起用法についてこう説明している。
「第二先発というより、今回は中で考えていたので。先発投手からのいい流れをつくってくれるのも彼で、先発がダメだったときに流れを変えてくれるのも彼、と大会に入る前から頭に入っていました。彼には『中でフル回転になると思う』という話はしていた」
指揮官の期待に応えるように、米国戦では流れを引き寄せる投球を見せた。5回と早い状況での登板については「少し驚いた」と振り返りながらも、「いつでも行けるように準備していたので、問題なく試合に入ることができました」。
本調子でない先発・菅野智之が序盤にリードを奪われたなか、心がけたのはリズムを引き戻す投球だ。
「何とか相手の流れを切りたい思いはありましたし、それをうまくすることができたと思います」
象徴的だったのが初球、先頭打者のメイに投じた156キロ(球場表示)のストレートだった。その後も150キロ台のストレートを中心に鋭く曲がるスライダー、落差の大きなフォーク、チェンジアップと剛柔織り交ぜたピッチングで2回を無失点に抑える。この間に打線が4点を奪い、逆転に成功した。
「チームが逆転しそうな雰囲気があったので、とりあえず点数を取られないようにと心がけて投げました。2回か3回だろうなと思って、マウンドに上がっていたので。短いイニングなので、初球から全力を出して行こうと思っていました」
則本に加えてもうひとり中継ぎにはさむ必要のある場合はドミニカ共和国戦で3回を投げた小川泰弘を送り、そこから後は必勝リレーでつないでいく。山崎康晃、増井浩俊のセットアッパーがともに2試合に投げて無失点に抑えるなか、気がかりなのはクローザーを任されてきた松井裕樹だ。
指揮官の手腕問われる守護神の起用法
ドミニカ共和国戦では最終回をきっちり締めた一方、1点リードで最終回のマウンドに上がったベネズエラ戦では2点を失い逆転を許している。ストレートは力負けし、チェンジアップが甘く入ったところを痛打された。今季のペナントレースでは見られなかったような打たれっぷりで、試合後のミックスゾーンでは茫然(ぼうぜん)自失の表情だった。
「見ての通り、自分の実力がないので。何が悪かったというより、通用していなかった。コントロールとか、そういう以前のことです」
守護神として期待してきた松井を今後、どう起用していくのか。増井や山崎の状態が良く、役割を入れ替えてもいいのではないだろうか。澤村拓一も控えており、指揮官の手腕が問われるところだ。
グループリーグ5試合を通じ、確かにできつつあるチームの形とふたつの穴が同時に浮かび上がった。負けたら終わりの戦いが始まるなか、ベンチワークも大きな鍵になってくる。
試合後の会見で、ここまでの5試合の反省点について聞かれた小久保監督は、こう答えた。
「明日一発勝負なので、やるかやられるか。反省というより、成功させるんだという思いだけじゃないですか」
とにかく前向きに戦う。その姿勢で戦い無傷の5連勝で準々決勝に駒を進めたが、このまま頂点にたどり着くことはできるだろうか。
16日に桃園国際棒球場で行われるプエルトリコ戦に先発するのは、指揮官がエースと位置づけている前田健太。今季の沢村賞右腕が大きな期待を背負い、勝負のマウンドに立つ。