女子W杯を取材、現地観戦の魅力 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

(1)開催国の盛り上がり、力の入れ具合を実感

街中にも大きなポスターが登場(写真はカナダ女子代表) 【松原渓】

 今回の開催国は、カナダ。とにかく自然が豊かで、街中にも緑が溢れる素敵な国だった。12年ロンドン五輪の女子サッカー競技で3位と躍進を遂げたカナダでは、競技人口も増加中で、大会への力の入れ方もかなりのもの。決勝の会場となったバンクーバー市内ではたくさんのポスターや宣伝広告を見かけたし、スタジアム周辺にはサポーターの交流の場となる「ファンゾーン」というイベントスペースが設けられた。また、スタジアムの外には各国の選手の大きな絵が飾られていた。

スタジアム周辺にはイベントゾーンも登場 【松原渓】

スタジアムの外には選手の絵が(写真は安藤梢選手) 【松原渓】

 今大会は出場チームがこれまでの16チームから24チームに増え、放映権料やスポンサー料も上がったため、優勝賞金も前回の2倍にあたる200万ドル(約2億4000万円)に増加。女子W杯の拡大を象徴する大会となり、入場者数も135万3,506人(1試合平均2万6,029人)と、過去の記録を塗り替えた(これまでの最高は1999年米国大会の119万4,221人)。

 優勝した米国は“女子サッカー大国”と言われるほど、女子サッカーが盛んな国でもある。米国にとって準ホームとも言える隣国カナダでの開催だったこともあり、決勝戦では大勢の米国人サポーターがカナダに入国。ということは……決勝戦の会場は日本にとっては超アウェー! 「USA! USA!」の大歓声がスタジアムを振るわせ、地響きのような振動に身体がこわばるほどだった。本当のアウェーってこういうことなのか……と実感する、すごい体験だった。

(2)他国のサポーターと交流を楽しむ

オフィシャルショップで応援グッズやお土産を購入 【松原渓】

 試合が始まればライバルにもなるけれど、試合前や試合後など、他国のサポーターたちは本当にフレンドリー。W杯や五輪は開催国によって大会の雰囲気もガラッと変わる。W杯南アフリカ大会で有名になったブブゼラ(長いラッパの一種)のように、その国でしか見られないような応援や国際色豊かな応援席の雰囲気は、現地観戦ならでは。

 今回もさまざまな応援スタイルがあり、ユニフォームを着たり、タオルマフラーを巻くオーソドックスなスタイルに加えて、身体や顔にペイントをしたり、大きな国旗をマントのようにまとったり、背の高い帽子やマジックブーツ、被りものから着ぐるみまで……。なんでもありの応援スタイルに楽しませてもらった。

 対戦国以外のサポーターも会場に来ていて、一緒にスタジアムを盛り上げた。スタンドの人たちで作るウェーブや、会場に流れる音楽に合わせてダンスをしたり。特に決勝当日は、試合開始の数時間前から大勢のサポーターがスタジアム周辺で応援合戦を繰り広げていて、とても華やかな雰囲気だった。お土産は現地ならではのオフィシャルグッズも良いし、街中の雑貨店などを巡ってみるのも楽しい。

(3)出費を抑えて観光も楽しむ!

車窓から見える大自然 【松原渓】

 現地観戦となると、「相当出費があるのでは……」という心配もあるだろう。たしかに、W杯期間は多くの人が現地を訪れるため、ホテルの価格や飛行機のチケットなどは高騰しやすい。今回、バンクーバー市内のホテルは1泊2〜3万円という価格も珍しくなかった(日本よりも物価が高いので、元々少し割高ではあるけれど)。決勝前日はバンクーバー中のホテルが「キャンセル待ち状態」に陥っていた。

 早めに予約すれば確実に確保できるし、もちろん出費も抑えられる。とはいえ、W杯のようなトーナメント戦では、応援するチームがグループリーグを何位で通過するかによって試合会場が変わることも多い。チームの結果を見ながら予約すると、どうしてもギリギリになってしまうのは悩みどころだ。

 しかしそういう場合でも、選択肢は以前に比べると増えている。インターネットの普及で、今はさまざまなサイトから宿泊施設を一発で検索できる。また、現地の人の家で1泊〜ホームステイができたり、長期になる場合は家を借りられる予約サイトなどもある。キャンセル料などを発生させずにうまく旅程を考えるのも、出費を抑えてW杯を楽しむ1つのポイントだろう。

 ちなみに今回、私は決勝トーナメントから現地に入った。そこで、少々手荒な方法ではあったのだけれど、1カ月半前の段階で「グループリーグ1位通過、決勝戦まで勝ち上がる」ことを予想して、ホテルと国内移動も含めたフライトを予約した(料金はかかるが、いざとなればキャンセルも可能)。イチかバチかの賭けではあったけれど……なでしこジャパンを信じた結果、予想通りに勝ち進んでくれたのは嬉しかった!

 スタジアムから徒歩圏内の現地の女性の家にホームステイさせてもらい、とても快適に過ごすことができた。また、親戚のつながりで、バンクーバー在住の日本人ご夫婦のお宅にも数日間お世話になった。近くの観光スポットを教えてもらい、取材の合間にプチ観光やショッピングも楽しめた♪

食事も楽しみました♪ 【松原渓】

 道が分からない時や電車やバスの中、空港などでも親切な人が多く、いろいろなところで人の親切に助けられたなぁ……と感謝している。もし逆の立場で同じ状況があったら、しっかりお返ししなければ。

 サッカーに限らず、スポーツイベントを現地で観ることの魅力は、応援するチームの勝敗に熱狂することだけではない。来年はブラジルでリオデジャネイロ五輪が開催される。これまで生で見たことのない競技を、ぜひ現地で観戦してみたいなぁと思っている。

 また、なでしこジャパンのキャプテン宮間選手が話していたように、女子サッカーの人気を「ブームではなく文化に」していくために、微力でも貢献できるよう、精力的に取材活動を続けていきたいと思う。

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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