連勝にも不安が募る、なでしこたちの戦い W杯連覇に向けて必要な2つの自信回復

江橋よしのり

カウンターを怖れたなでしこたち

エンガナムット(右)に手を焼いたなでしこたち。カウンターを恐れ、ロングボールに頼る展開が増えた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 これで早くも2−0。幸先の良い滑り出しを見た多くの人が、この試合はワンサイドゲームになると予想したことだろう。ところが、ここからカメルーンのFWガエル・エンガナムットが馬力を前面に押し出しはじめると、次第になでしこの腰が引けていった。

 マッチアップした宇津木がスピード勝負で後手を踏む。チーム全体の重心が後ろに下がる。ここで、自陣でもリズミカルにパスをつないで相手を振り回し、選手同士が近い距離感を保ちながらじっくり前進していければよかったのだが、なでしこはボールをできるだけ早く、自軍ゴールから遠ざけようとロングキックに頼りはじめた。エンガナムットのスピードとパワーは、おそらくピッチに立つ選手たちの想像をはるかに超えていたのだろう。冒頭の阪口の言葉にもあったとおり、なでしこは相手のカウンターをあまりにも怖れていた。

 佐々木監督は、悪い流れを断ち切ろうと、後半開始から手を施した。スピードで対抗できる鮫島をDFの位置に下げ、中盤のぶつかり合いに強い宇津木をMF中央にシフト。そして宮間を「前半よりも楽な位置からキラーパスを出せるように」(佐々木監督)左サイドのMFに置いた。選手交代はゼロ人。この3人のポジションを移動させ、前半とは違う役割を与えることで、ゲームの流れを変えようとした。狙いは悪くなかったと思うが、実際に戦う選手たちはまだ前半の混乱を引きずったままだった。

選手たちから出た「意思統一」という言葉

 熊谷紗希は振り返る。

「後半、カメルーンがどういう戦い方をしてくるのかを見極めようと思っていたら、受け身になってしまいました。ラインを高く保つのか、下がって守るのか、チームとして意思統一が必要でした」

 熊谷以外にも、試合後何人もの選手が「意思統一」という言葉を用いてこの試合を振り返っていた。試合中に、ピッチ上のどの場所でどんな問題が起きているのかを発見するまではできたのだが、その対処の仕方がチーム内で共有できなかったことは、この先の決勝トーナメントを見据えると不安が募る。

「課題はたくさんある」と試合後に語った宮間が、一番大きな課題として挙げたのは、「2試合続けて、後半に思ったようなプレーができていないこと」だ。

「自分たちの判断や技術があれば十分できることなのに、それができていないという感じ。共通意識を多く持つことだったり、それぞれがもう少し余裕を持ってプレーすることだったり、改善できることはたくさんあると思います」

必要なのは、マイボールの時間を長くすること

決勝トーナメントを見据えると、マイボールの時間を増やすことが必要になる 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 では、必要な改善とは何だったのか。答えはパスを徹底的につなぎ、マイボールの時間を長くすることだろう。なでしこがボールを持っている間は、相手は攻撃を繰り出すことができないのだから。その意味で、キープ力とボール奪取力に秀でる安藤の欠場は、やはりなでしこにとって大きな痛手だ。同時に、ど真ん中でボール回しのハブになれる阪口、前線でのキープ力に優れる大儀見、冷静さと遊び心を備える大野忍が、決勝トーナメントでは欠かせない戦力になるであろうこともあらためて感じさせられた。

「苦しい展開にも耐えながら、最後にはスコアを1点リードして終えるというすべを、私たちは持っている」

 佐々木監督は試合後、外国人記者からの質問にそう答えていた。確かに4年前の優勝も、なでしこは劣勢の試合を何とか粘り切って勝ち上がって得たものだ。しかし決勝トーナメントで、おそらくカメルーンよりも強い相手と対戦しても、同じように逃げ切ることができるだろうか。相手を怖れず、近い距離でパスをつなぐこと。そしてそのパスを奪われても、素早く攻守を切り替えてすぐにボールを奪い返すこと。この2つの自信が回復しなければ、なでしこジャパンのW杯連覇は難しいだろう。

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著者プロフィール

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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