宮間あや、信じる仲間とともに優勝を 女子W杯に挑むなでしこ主将<後編>

上野直彦

スイスは今、注目しているチーム

W杯初戦で対戦するスイスについては「若い選手が多く、勢いがある」と警戒する 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――さほど注目されていなかった前回大会と比べて、連覇が期待されています。今回はハードルが上がっていると思いますが、大会に臨むうえで気持ちの違いは?

 自分たち自身に期待していますし、連覇をしたいと思っています。周りの声というよりは、自分たちが何をするか、何をするべきかに今は集中しています。

――W杯の展望についておうかがいします。同じグループに組み込まれたのはスイス、カメルーン、エクアドルといずれも初出場の国。それぞれの対戦国の感想を聞かせてください。

 スイスは今、注目しているチームです。選手が若いですし、とても勢いがある。個人技もあるし、アクションが多いチームです。ドリブルを仕掛けてくる選手も多いですし、果敢にゴール前まで入ってくる。守備は堅いイメージがありますね。横の揺さぶりなどで対応できないかと思っています。

――カメルーンやエクアドルは?

 謎ですね(笑)。まだ映像も見ていないですし、情報もありません。

――アテネ五輪でナイジェリアにまさかの敗北を喫してから、なでしこはアフリカ勢に弱いと言われますが。

 南アフリカとナイジェリアとは対戦しましたが、そこと似ているのかどうか。連動して動くことは得意ではないと思いますので、じっくりと攻めたいです。エクアドルは南米なのでテクニックがあるのかなと、勝手に予想はしていますが、スカウティングの情報を見てからです。

「この国でサッカーを文化にしていきたい」

「この国でサッカーを文化にしていきたい」と語る宮間。そのためには世界で結果を残すことが不可欠だと認識している 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――W杯、ロンドン五輪と続いたなでしこブームから、その後注目度が徐々に落ちていった部分があります。その点はどう思われますか?

 自分たちでコントロールし切れるものではありません。もちろんメディアの方々の力もありますし、私たちの能力や結果も当然必要なもので、全てが合わさらないといけません。そこをクリアにしないと私が目指している“文化”にはなりません。難しいことではありますけれど、継続していくことだけはできますし、そこには自信を持っています。人が何を言おうとも、とにかく継続していくことが自分にできることだと思っています。

――「サッカーを文化にしていく」。宮間選手の持論です。実現するにはどうすればいいでしょうか。また、未来のなでしこはどう歩んでいくべきでしょうか。

 サッカーだけでなく、国を代表するチームは、理屈抜きに応援できるものだと思います。なでしこも、いつかそうやって皆さんから応援してもらえる存在になれたらと願っています。昨年のベトナムでのアジアカップで、女子のW杯出場が決定した日に渋谷の街とかでハイタッチなどあったでしょうか。今はまだ男子ほどの盛り上がりはありません。男子サッカーを応援することは今や文化になってきている。女子も、そういうふうに皆さんから応援される存在、文化になるよう頑張っていきたいです。

――なでしこジャパンが成長するために希望することは?

「女子サッカー大国」と呼ばれている国と取組みや環境を比較すると全くかないません。Aマッチ数も圧倒的に違う。またドイツやフランス、米国やメキシコなどは近隣諸国でマッチメークしやすいです。今は男子に比べてAマッチの数も少ないので、もっと試合をやってもらえたらと。その1試合の経験値が今後の成長に確実につながります。

岡山湯郷BelleからW杯の舞台へ

岡山からW杯の舞台へ。宮間は、多くのサポートを受けている美作の地を世界に知らしめたいと思っている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――チームメートのGK福元美穂選手と岡山湯郷Belleの代表として大会に挑みます。宮間選手にとっては18歳から移り住んだ特別な街。その気持ちを聞かせて下さい。

 移り住んでもう10年以上です。本当に町の全ての人からサポートを受けています。その代表として私と福元選手はW杯の舞台に立つので、美作やクラブの名前を世界に知ってもらういい機会、精いっぱいプレーするつもりです。いろいろな巡り合わせで、今この土地にいますから、きっとここには何かあるはず。ただ、本当の大きな意味は全てが終わった時に分かると思っています。

――いつまでも現役でいてほしいですが、宮間選手のセカンドキャリアの夢を聞かせて下さい。

 昔、父親から「ボールを自由に操れなかったらサッカーは楽しめない」という言葉を何度も聞きました。今度は私が子どもたちにそれを伝えていければいいなと思っています。子どもの頃、トム・バイヤーさんのサッカー教室に通ってショックを受けました。まるで魔法使いのように見えて……あんなふうになれたらと思いました。今回、トムさんと一緒に『トムさんと宮間あやのサッカー・テクニックス』というDVDを制作させていただきました。また、今年の4月からは『おはスタ』(テレビ東京系)でもコーナーを持っています。夢はトムさんのように子どもたちにきっかけを与える人になりたい。そして普通の生活の中にサッカーがある文化や地域を作っていきたい。サッカーが文化として定着してほしいです。

――地域とは現在クラブがある岡山や故郷の千葉とか?

 そうですね。それをもっともっと広げていきたい。子どもたちに指導することは本当に私の夢です。

――最後にW杯への抱負を聞かせてください。

 自分を信じて仲間を信じて戦います。そして優勝は信じなければ実現しません。そういう気持ちを持ってW杯に臨んで優勝したいと思います。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。スポーツライター。女子サッカーの長期取材を続けている。またJリーグの育成年代の取材を行っている。『Number』『ZONE』『VOICE』などで執筆。イベントやテレビ・ラジオ番組にも出演。 現在週刊ビッグコミックスピリッツで好評連載中の初のJクラブユースを描く漫画『アオアシ』では取材・原案協力。NPO団体にて女子W杯日本招致活動に務めている。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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