GWに“山の芸術”雪形探しはいかが? 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

印象に残った北アルプスの雪形

乗鞍岳の「尾長鳥」の一部。近くから見ると何が何だか……(笑) 【松原渓】

 ちょうど2年前の5月に、テレビ番組の取材で雪形ウォッチングを体験し、忘れられない経験になった。その時、私が見た中で印象に残った北アルプスの雪形を紹介したい。

 ちなみに、雪形には「ポジ型」と「ネガ型」がある。ポジ型は黒い山肌を背景として積雪が形作る模様(白く浮かび上がる)、ネガ型は積もった雪の中に黒い山肌が形作る模様(黒く浮かび上がる)だ。

■白馬岳(ネガ型:見頃は4月下旬〜5月下旬)
山腹に「代掻き馬」が現れることから、「白馬」の名前がついたという。大きいので、見つけるのは比較的簡単だ。ちなみに名前の由来は、農事暦として雪形が使われていた時代に、田植え前の代掻き作業(田に水を入れて土をならす作業)の頃に現れたことから「代掻き馬」の呼び名が生まれ、それが誤った当て字により「白馬岳」になったそう。てっきり「白い馬」だと思っていた。

■蝶が岳(ポジ型:5月〜6月初旬)
その名の通り「蝶」の雪形。大きな羽を広げた真っ白な蝶蝶が稜線近くに現れる。雪が溶けて消えていく際、黒い斑点をつけて消えていくように見えるのもユニークだ。安曇野市の穂高付近がベストスポット。

■鹿島槍ヶ岳の「鶴と獅子」(ネガ型:4月下旬〜5月下旬)
飛び立とうとする鶴と、勇ましく山を駆け下りる獅子が向かい合った姿で現れる。周囲の模様に紛れて見つけにくく、難易度は高め。

■五龍岳の頂上付近に現れる「武田菱」(ネガ型:3月下旬〜5月上旬)
甲斐の武田家の家紋の形。雪の解け具合で見られるタイミングは難しそうだが、私は天候にも恵まれ、綺麗な家紋を見られた。

■乗鞍岳の「ニワトリ」(ポジ型:4月下旬〜5月初旬)
実際にその触れられるぐらい近くまで行ってみた。実際にそばに行くと、何がなんだか分からない(写真を参照)。でも、麓から見ると綺麗な尾を伸ばした大きな尾長鳥の雪形が見える。この雪形は、判子で押したようにダイナミック!

写真の奥の乗鞍岳の中腹にいる「ニワトリ」。見つけられますか? 【松原渓】

 他に、私は直接見ることができなかったが、常念岳の「常念坊(お坊さん)」(ネガ型:3月〜5月上旬)は有名。手に持っているのはお酒の徳利(とっくり)とも、托鉢とも言われる。見つけた人の豊かな想像力に感服。爺が岳には、種を蒔いているように見える「種まき爺さん」(ネガ型:3月〜4月下旬)が、山頂近くに現れる。見方によっては、首を傾げたキリンにも見える?

想像力を膨らませると、もっと楽しい

雪解けの高山植物も美しい 【松原渓】

 ここに挙げたのは北アルプスの雪形だが、日本人なら知らない人はいない富士山でも、11月から翌年の夏にかけて複数の雪形が見られる。

 地域別では新潟県が1番多く、次いで長野県。山別のランキングでは、青森県の岩木山が1位。なんと、1つの山に24体もの雪形が見えるそう! ツバメ、ウサギ、竜の子(ネガ型)、サギ、イヌ、鯉……と、それぞれに見える時期が違い、イヌが出てきたら豆まき、ウサギが出たら田植えの準備、ツバメが出たらタケノコ採集の最盛期……といった具合に、農作業の目安になっていたのだとか。

 想像力を膨らませれば、1つの雪形も違う形に見えたり、周囲の模様から新しい雪形を見つけることもできる。自分だけの雪形を見つけて物語を編んでみるのも楽しそうだ。
 とはいえ、現在は天気予報などの発達により農事暦としての役割は失われたこともあり、文化遺産とも言えるこの雪形が若い人たちに伝わる機会は少ないという。実際、私も雪形ウォッチングを体験してみるまで、その奥深い魅力を知らなかった。今後、少しでも多くの人が雪形の魅力に触れて、伝承する機会が増えることを祈りたい。

 詳しい写真は雪形を扱った本やネット上でもたくさん紹介されているので、GWや連休にハイキングや登山を考えている人は、ぜひ雪形を探しに行ってみてはいかがでしょうか?

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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