「日本ラグビーを救うためW杯で勝つ」 決戦まで5カ月、ジョーンズHCの決意

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

「いいチームを作ることしかできない」と語り、自身も勉強を続けている、と語ったジョーンズHC 【スポーツナビ】

 休憩を挟んで行われた第2部では、参加者とジョーンズHCとの質疑応答が行われ、日本ラグビーを思う参加者からの問いかけに対しても、ジョーンズHCは熱弁を振るった。

私に感化されて変わることを期待

――保守的な傾向が強い日本人に対して、文化の変革を行おうとすると、たくさんの障害や壁が出てくると思います。それをどのように解決したのか、あるいはこれからしていくのでしょうか?

 自分の仕事は、日本代表チームのコーチです。チームを勝たせることが自分の仕事です。それができれば、人々が私に感化されて変わろうという気持ちになるかもしれません。

 先週イタリアに行きました。1年前、イタリアはトップ10に入っていましたが、今は15位に下がってしまいました。何があったのかというと、イタリアの育成システムに大きな問題が生じていたのです。日本とはまた違った問題です。しかし、イタリアも日本と同様、変化することに抵抗意識を持っています。私はあくまでコーチなので、いいチームを作ることしかできません。ただ、それを成し遂げることによって、人々がそれに感化されて考えが変わっていくことを期待しています。

 これまで何度も言っていますが、日本人選手は非常に高いポテンシャルを秘めています。体が大きくないことは不利ですが、タフで忍耐強く、教えがいのある選手たちです。JAPAN WAYで勝負をすれば、世界のどこのチームも真似できない、独自のラグビーができると思います。私の狙いはそこです。

 そして自分たちを信じて貫き通すことです。負けたからといって、すぐに戦い方を変えなければと考えてはいけません。例えばオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)を見てください。10年前、10回中4回はオーストラリアに負けていました。それが今では10回中9回勝つほどになりました。ニュージーランドが目指すラグビーを信じ、貫き通したからです。

 彼らはたとえ負けたとしても、戦い方を変えようとはしません。課題があると受け止めます。これはわれわれにとっても必要なことです。勝てると信じて、そのスタイルを貫き通すこと。そして、そのスタイルを実践できるスキルを持った選手を育成することが大切です。

コーチは日々勉強、常に学ぶ心構え

――高校、大学レベルでラグビーIQを高めるには何が必要でしょうか?

 先日U−18のキャンプに行きました。そこで40人くらいの選手たちに聞きました。「1日3時間練習している人は?」と。すると30人が手を挙げました。しかし、ラグビーで毎日3時間練習をこなすのは、本来ほぼ不可能なことです。ラグビーはフィジカルのゲームだからです。私はコーチ歴20年になりますが、3時間のトレーニングをしようとしたら何も考えられません。

 さらに「4時間練習している人は?」と聞いたら、2人が手を挙げました。「4時間以上の練習は?」と聞くと、一番前に立っていた細い選手が「自分は5時間練習している」と答えました。その5時間で何をしているのか聞くと、最初の1時間半はランパスをしていると。でも、実際の試合で4人が並んでランパスするシーンを見たことがありますか? 試合で行われないのになぜそんな練習をするのですか。

 ボールを持ったときは必ず前にディフェンスがいます。ボールをパスするのは、ディフェンスが前にいるから。ディフェンスが詰めてきたらパスをします。もしディフェンダーが詰めてこなかったら自分で仕掛ければいいのです。4人を並べてランパスするなんていうのは本当にバカげたことです。その考えを変えないといけません。

――世界で通用するために、指導者のレベルアップとして望むことは?

 勉強です。いいコーチになるためには日々、常に勉強しなくてはいけません。自分はコーチ歴20年の55歳です。けれども、いまだに自分よりも知識を持っている人のところに行って話を聞きます。ビジネスと一緒でラグビーのコーチングも常により良い方法、新しい方法があります。そして学ぶ準備、学ぶ心構えがないといけません。

 自分の経験から言うと、日本のコーチ陣はあまり学ぶ姿勢が見られません。すべて自分は知っているんだと思い込んでいます。大学でチャンピオンになったから、自分はラグビーのことをすべて知っていると。なので、何も言われたくない。他人に言われたことを受け入れない。そのメンタルでは変化できません。

 私は昨年11月にドイツのサッカークラブ、バイエルン・ミュンヘンに行き、ジョゼップ・グアルディオラ監督に会いました。彼と話して分かったのは、昨年自分がやったコーチングがどれだけ足りないところがあったか、ということです。恥をかきました。学び、反省することが多かったです。あらためて自覚したのは、コーチとしていろいろなアドバイスを聞いて学ばないといけないということです。ほかのスポーツでも成功しているコーチの話を聞き、その意見を取り入れ、どう活用できるかを考えます。日本には非常に優秀なコーチがいます。けれども、なぜかラグビー界では学ぶ姿勢に対して、抵抗がある人が多いように思います。

あなたにとってラグビーとは?

W杯出場チームの中で最も体格が小さい日本代表を率いるジョーンズHC。それぞれのチームの独自の戦い方も大会の面白さと語る 【スポーツナビ】

 最も美しい競技、世界で一番美しい競技です。選手がいいパフォーマンスを発揮できると、フィジカルとスキル、戦術がすべて重なっていい試合になります。そしてゲームはまったく予測ができない。それがラグビーの魅力です。

 ラグビーはさまざまな方法で戦って成功できる競技です。例えば、イングランドならモールもできるし、キックもできます。ニュージーランドは最も身体能力が高い選手たちが集まるチームです。そして南アフリカは体格的に世界一大きいチームです。日本は(W杯に出場する国の中で)一番小さな体格です。W杯ではそうした国々が、それぞれの特性に合った独自の戦い方でぶつかり合います。そこにW杯の面白さがあるのです。

協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会

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