ダル離脱の衝撃、6人ローテは解決策か 後を絶たないMLBのトミー・ジョン手術
投手の負担を軽減する先発6人制
MLBでは好投手のトミー・ジョン手術が相次ぐ。左上から時計回りにストラスバーグ、ハービー、フェルナンデス、ウィーラー 【写真:ロイター/アフロ、USA TODAY Sports/アフロ】
「本当に選手を守りたいなら、先発ローテーションに入る投手をもう1人増やすべきでしょう」
昨年のオールスター期間中、他ならぬダルビッシュが5人ローテーションから6人への変更を提唱し、一部の米メディアも取り上げた。
先発5人制は米国で30年以上も浸透してきたにもかかわらず、現在のケガ人の多さをそこばかりに帰結させるのは不自然ではある。しかし、前述の通り、近年は速球派投手の増加ゆえに肘への負担が増しているように思える。だとすれば、腕をより長く休ませることは1つの故障予防手段にはなる。
1年を通じて6人ローテーションを採用すれば、5人体制では1シーズンで33〜34試合くらいだった先発機会が26〜27試合程度に減る。投球回数にして35〜50イニングを減らせれば、必然的に個々の負担は軽減するはずだ。
期間限定で6人制を採用する球団も
ただ、抜本的な変革には往々にしてリスクが伴うもの。新しいシステムを導入し、故障の危険を少しでも減らすことができれば、長い目で見れば投手、チームの両方にポジティブな変化となるはずなのである。
「休みと調整の時間を多く設け、1週間に1度だけ先発するという日本野球の通例は理にかなっている。僕個人の意見としては、今後はメジャーも6人ローテーションを採用する方向に進んでいくと思う。これだけ多くの好投手がケガをしているなら、何かの対策を講じようとするのが当然だよ」
昨季中、AP通信のマーク・フィッツパトリック記者は筆者にそう語ってくれた。実際にダルビッシュの離脱などで投手のケガが再び話題になった今季、複数のチームが一時的にでも6人ローテーションを試しても驚くべきではないのだろう。
米国東海岸では、昨季に10勝以上を挙げた投手を6人擁するナショナルズ、多くの若手好投手を抱えるメッツ、田中を先頭に先発陣に故障あがりの選手が多いヤンキースなどが候補。いきなりシーズンを通じてはあり得ないが、例えばヤンキースなら4月中旬からの31日間で30戦という厳しい日程の中、ナ・リーグの大本命とされるナショナルズならプレーオフ進出がほぼ決定後の夏以降など、先発投手のフレキシブルな起用は考えられる。
まだ気運が高まっているとまでは言えないが、一部のチームが6人ローテーションをある程度の期間続けて実行することがあれば、それは歴史的な変化と言っていい。
そういった意味で、各チームの先発投手の使い方は2015年のメジャーリーグの注目点の1つ。その結果、成果次第で、今季がMLBの歴史上でも重要な年として記憶されることになる可能性もあるはずだ。