日本がスーパーラグビーに参戦する理由 頂点を目指し下した決断の裏側
19年W杯があるから進んだ選手強化
来場者からの多岐に渡る質問に答える岩渕氏。左は司会の村上氏 【スポーツナビ】
19年のW杯は本当に大きいことだと思います。つい数日前に会場が決まりましたが、ちょうど(招致活動から)4年くらいでW杯(の日本開催)が決まって、(大会当日まで)もうあと同じくらいしか時間がない。そういう意味では進みが遅いという見方もあると思います。実は、今の代表チームはこのW杯に向けてかなり強化を進めてきて、それにかなりお金を使ってきたんですね。ただ、そういう意味では強化に向けた試みが19年があるからいろんな形でいい方向にいった、と。それがあるから、スーパーラグビー(加入)も前に進められたと思います。
――スーパーラグビーに学生の選手や正社員の選手が出場することは可能か?
例えば今、藤田(慶和)選手や福岡(堅樹)選手が大学生ながら4月から日本代表でプレーしていますが、学校との調整に問題がなければ当然プレーすることができるようになると思います。また、そういう方法が出てくるか分かりませんが、松島(幸太朗)選手がそうであったように、高校からスーパーラグビーのチームに行く選手が日本の中でも出てくる可能性は十分にあると思います。
――日本チームの選手の収入はどうなるのか?
そこは今かなり議論があるところです。運営母体となる団体が別にできることになっていて、その団体が選手の契約や、選手が所属するチームとの契約を考えていくことになっています。なるべく3月中にそこを詰めていくつもりです。
――ラグビーはサッカーや野球に比べて圧倒的に地上波やBSでのテレビ報道が少ない。スーパーラグビー加入によってメディア露出が増えると思うか?
増えなきゃいけないと思っています。ただ、この間のマオリオールブラックス(対日本、14年11月)も地上波でやっていただきましたし、15年9月のW杯(イングランド)もそういう方向で話が進んでいます。そういった大きなイベントを通していろんな形で皆さんの目に触れる機会を増やしていきたいですね。スーパーラグビーは続いていくので、19年に向けて露出をいかに増やすかは重要ですし、15年(のW杯)に向けても増やしていく予定で話が進んでいます。
参入を機に変わっていかなければいけない
先ほどもお話した通り、これから試合数の問題はすごくクローズアップされるでしょう。ヨーロッパではかつて試合数があまりにも多かったので、一時期、選手の出場試合数を制限したことがあります。今回、スーパーラグビーでプレーオフまで行ったら、トップリーグと代表チームの試合を含めると(年間試合数が)30は超えて40に近づくと思います。それを考えると、スーパーラグビーはある程度の枠を持ってローテーションのような形で戦うといったことも、選手の体調管理の上で考えなければいけないことだと思います。
――他のスーパーラグビーのクラブのように、下部組織を作って若手を強化していくことは?
そこがひとつ大きく考えないといけないところで、U20の強化を考えても、当たり前のレベルを変えるという意味では、やはり18歳〜20歳の選手たちがそういう(高いレベルの)ところで毎日を過ごすというのが大切になってきます。そこは方法を考えているんですけど、うまくやれるかどうかは分かりません。ただ、大きく変われるひとつのきっかけになるので、考えないといけないと思います。
――日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチのノウハウ継承に向けて何かしていることは?
(ノウハウ継承は)ずっと日本の課題です。代表チームに今、日本人コーチはラグビーコーチとトレーニングコーチの2人が入っていますが、彼らを含めて、そういった(継承)活動というのは19年W杯に向けてやっていかなければならないと思っています。スーパーラグビーはその点も大きなところです。日本代表のチームですと1つのチームでしかなかなかできませんが、(今後は)両方のチームのコアなところは同じにしながらも、スーパーラグビーのスタッフに日本人を多く入れるということは考えていかなければなりません。
――19年W杯以降の日本のラグビーをどのようにしたいと思っているか、実現のためのロードマップは? 例えばトップリーグのプロ化も考えているか?
トップリーグについては、トップリーグそのものが今のところプロ化になるという話は出てきていません。日本のラグビーは、世界的にはあまり例がない形で発展をしてきて、その中で今回、世界と戦っていく中での方向性のひとつとして、スーパーラグビーに参入するということなんです。スーパーラグビーでは当然、トップリーグの選手たちが多くプレーすることになるため、選手の契約や生活のことについては、今度のスーパーラグビーが始まるまでの間にある程度解決しないと進まない話だと思います。そういう意味では、今回のスーパーラグビーを機に、いろんな形で話をしながら変わっていかなければならないことがあると考えています。
あなたにとってラグビーとは?
岩渕氏はラグビーが作る明るい未来を見てもらいたいと願っている 【スポーツナビ】
協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会