3年ぶりの戦いに戸惑い「なぜ今?」 イオが語る『紫雷姉妹対決』の本音

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目指しているものが違う

14年はスターダムのエースとして突っ走ってきたイオ。「1番」と誇れる実績を残した 【前島康人】

――イオさんは、13年4月の赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム)奪取からV10を達成し、14年はスターダムのエースとして団体を引っ張って、突っ走ってきました。一方の美央さんは4団体所属となり、数多くの試合をこなすという別々の活躍をしてきています。実際、美央さんの試合は見たことありますか?

 ほぼ見てないですね。確か、1回だけ長与千種さんプロデュースの『That’s女子プロレス』で姉が出場しているのを遠めで見たくらいですね。

――プロレスラー紫雷美央として見たとき、イオさんはどんな印象を持っていますか?

 いちプロレスラーとしてだったら、彼女は彼女なりに、4団体も初めてだし、フリーとして年間何試合もこなすというのは良いことだと思います。それが売りだし、自信を持っているし、すごく素晴らしいと思うし、尊敬はしています。

 ただ、自分とは違う道だなと。元々、『紫雷姉妹』として、ニコイチでデビューして一緒に行動をしていた中で、お互いの道が離れたのは、それぞれの方針が違うから。求めているもの、目指しているものが違うからなんです。

 私はスターダムを選んで、スターダムで団体プロレス、1つの団体に絞って、1つの試合に集中して、生きていくことを突き詰めてきました。

 美央は美央で、フリーとして、いろいろな団体に上がって、いろいろな関係を作って、結果、4団体の所属と、年間の多数のお仕事を手に入れました。

 私はチャンピオンベルトやV10を手に入れ、それぞれがそれぞれの道で突き詰めて、自分が「これが一番です」と言えればいいと思うんですよ。私はこれが一番だと思っているし、誰にも負けない。ちゃんとやったという自信と責任があり、スターダムを引っ張りましたと言えます。

――ただ女子プロレス界全体を見渡した時、スターダムがひとつだけ独自路線で大会をしていて、他団体との交流が少ないという部分があります。そういう部分で「壁を乗り越えたい」という発言にもつながっていると思います。女子プロレス界としてひとつになるよう引き込みたいのかもしれません。

 そこは私は分かりませんが、スターダムが「引き込みたい」と思われる存在であるなら素晴らしいことだと思います。私たちがやっていることが魅力的で、間違いじゃないということなので。

 ただ、何でこの試合を今のタイミングでやるかを考えたときに、自分がやる4団体興行に客を入れて、満員になったらそれでいいの? そういう意図なの? という疑問はあります。カードとしては面白いじゃないですか? すごく喜ばしいことだけど、それによって何を見せたいのか? 今のところはそこが見えていません。試合をしたら見えてくるのかなという希望もありますけど……。

こんな「濃いドラマ」はほかにない!

どんな試合になるか予想がつかない一戦。“天空の逸女”はリングでどんな戦いを見せるか!? 【スポーツナビ】

――場合によっては、これから接点を持っていく可能性もあると?

 そこが面白いところですよね。先ほども、まったく分からないですと言いましたが、「良かったね、良かったね」と抱き合って終わるかもしれないし、「二度と顔を見たくない」で終わる可能性もありますから。

 そこは作り物じゃないんで。血のつながりは作り物じゃないんです。だから、そういうリアルな、演技じゃ埋まらない、どんなにつくろっても、そんな顔はできませんし、生まれた時から一緒ですし、血がつながってますし。

 これが他人なら、まったく気になりませんし、そんなの知らないよと、冷静に流せると思えるんです。でも、やっぱり熱くなっちゃってる自分がいるわけです。譲れないというか。やっぱり特別な、姉だから。

 自分は自分のことを冷静だと思っているのですが、いろいろ取材で話をしていて、自分がぜんぜん冷静じゃないのを知り、美央だから、お姉ちゃんだから、譲れない特別な思いがありました。

――プロレスラーではなく、姉の紫雷美央として見た時は、疎遠にはなっているけど、仲が悪いわけではない、という話もされていましたよね?

 そうですよ。結構会ってますし、お正月も一緒でしたし。先日もおばあちゃんのお見舞いに行ってます。

――そういう時にプロレスの話は?

 しないです。それは、昔から。2人で組んでいた時もそうですけど、プライベートの時間でプロレスの話をすると、むちゃくちゃけんかになるし(笑)。

 そこは姉妹と『紫雷姉妹』を切り離して考えたくて、たまに割り切れなくて、よく試合会場でもけんかしてましたよ。

――それがストレスだった?

 そこは良し悪しでしたね。例えば巡業のホテルで「姉妹だから2人一緒ね」と言われた方が気兼ねなく過ごせるし、行動も1人にならずに済んだし。

 ただストレスも多かったです。やっぱりお姉ちゃんだしというのもあって、決定権は美央にあって、自分の意見があんまり、という時期もあったし。周りからも、姉妹セットと常に見られたり。

 ずっと妹として過ごしていた中で、自分の欲や野望が大きくなって、「ここでお別れだね」という道を歩んできたというか。

――それがスターダムに来た決定的な理由?

 そうですね。私は1番になるために、スターダムに来ました。2人は1番になれません。1番は1人ですから。

――今回、それぞれの道で「1番」を取った2人が対峙するわけですが、これからは女子プロレス界を盛り上げるという意味で、接点を持つことが本望というのはありますか?

 やってみないと分からないです。私自身が「紫雷イオ」というレスラーと妹としてのイオの狭間を行ったり来たりしているので。本当に試合をして、手応えを感じたら、その後の続きもあるかもしれない。果たしてそれが妹としてなのか、紫雷イオとしてなのか。そこは分からないですし、とにかく、一番はリング上に立って、美央の目を見た瞬間にすべてが分かると思います。

――ファンが見るところは、やっぱりそういうところに面白さがある試合ですね。

 そうですね。多分、予想が一切つかないので。私自身、こうなるだろうという予想ができないので、お客さんもできないと思うので。
 
 こんな試合、どこにもないじゃないですか? 私が生まれた時から一緒で、その25年間のドラマが積み重なっている。こんなむちゃくちゃ濃いドラマ、世界中探してもないと思います。お客さんとして見ても、この試合は面白いと思いますよ。
■4団体合同興行「M.I.O」
2月14日(土)東京・新宿FACE 開場17:30、開始18:30

【対戦カード】

<メーンイベント>
紫雷イオ(スターダム)
紫雷美央(ユニオン、WAVE、OZアカデミー、アイスリボン)

<6人タッグマッチ>
フェアリー日本橋(OSAKA女子)、ダイナマイト関西(OZアカデミー)、石川修司(ユニオン)
諸橋晴也(ユニオン)、宮城もち(アイスリボン)、アジャコング(OZアカデミー)

<4団体推薦者4wayマッチ>
つくし(アイスリボン)
渋谷シュウ(WAVE)
チェリー(ユニオン)
尾崎魔弓(OZアカデミー)

<ミクスドタッグマッチ>
木高イサミ(ユニオン)、飯田美花(WAVE)
桜花由美(WAVE)、風戸大智(ユニオン)

<タッグマッチ>
加藤園子(OZアカデミー)、水波綾(WAVE)
藤本つかさ(アイスリボン)、松本都(崖のふち)

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