「勝つべくして勝つ」ジェンティルドンナ 有終の有馬記念、父に並ぶ七冠締め

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ジェンティルを支えた強さの秘密

最後のジョッキーに指名された戸崎も満点の騎乗で応えてみせた 【中原義史】

「すごく賢くて、素直な馬。騎手の意思でレースを運べる馬ですね。我慢してくれるところでは我慢して、行くところでは行ってくれる。ゲートも速いので位置取りもすんなりと自分の好きなところを取れる馬なんです」

 戸崎のこの言葉を聞き、この期に及んで僕はハッと、ジェンティルドンナの強さの最大の秘密を知ったように思った。ぶち抜いたオークスや、オルフェーヴルを弾き飛ばしながら勝ったジャパンカップの印象が強いせいか、恐ろしいまでの末脚の切れ味と勝負根性がその強さを支えていると思っていたのだが、そうではなく、騎手の意のままに操れる素直さと乗りやすさこそがジェンティルドンナ最大の長所だったのだ、と。

「競馬におろしてすぐからGIを争う立場にいて、この3年ずっと結果を出してきた偉大な馬です。そして、ラストでこれだけのパフォーマンスを見せてくれて、改めて凄い馬だなと思いましたね。よく私が管理することができたなと思います」
 ジェンティルドンナとの3年の歩みを振り返った石坂調教師は、ベストレースに迷わずこの有馬記念を挙げた。そして、グランプリの余韻が色濃く残る17時過ぎからは引退セレモニーが執り行われ、スタンドを埋め尽くすぐらいの多くの人たちが、歴史的名牝を見送っていた。

1つの区切り、新しい時代はすぐにやって来る

1つの時代は終わった、次の新時代はすぐそこまで来ている 【中原義史】

 JRA創立60周年という節目の1年は終わり、同時にジェンティルドンナという時代も終わった。振り返ればこの10年は、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、そしてジェンティルドンナへと続く“牝馬の時代”だったと思う。その象徴的存在がターフを去ったJRA61周年目から、日本競馬はどのような時代へと突入するのだろうか? そんなことを考えながら年末年始をゆっくり過ごしたいところなのだけど、東西金杯は1週間後の1月4日。あまり感傷に浸るヒマもなく、新しい時代はすぐにやって来るのである。

 どうでもいい余談ですが、結局、有馬記念でも心穏やかに年越しできないくらい財布の中身を持っていかれてしまいました。来年こそは“馬券”でいい思いをしたい! それでは、有馬で勝った人も負けた人も、まだ東京大賞典がある、いやいや競輪グランプリで最後の大勝負という人も、すべての競馬ファンのみなさま、よいお年を!

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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