あなたのサービスがすぐに変わる!? 世界トッププレーヤーのテニスを参考に

坂井利彰

「イチかバチか」から卒業する

フラットサービス 【田中伸弥】

「アマチュアプレーヤーの方はイチかバチかのファーストサービスと“入れるだけ”のセカンドサービスという思い込みがあるのかもしれませんが、トップ選手の中にもファーストサービスでもスピードを抑え、スピン量を増やしてコントロールをつける“1.5サービス”を打つ選手も多くいます。
 また、セカンドサービスでは、相手の身体に食い込むように変化するボディサービスや、コート外に出ていくように弾むワイドサービスなど、スピンと変化を駆使した多様なサービスが使われています」

★1.5サービス 【田中伸弥】

山なり(スライス)サービス 【田中伸弥】

【渡川光二/牛尾英則(ウシオデザイン)】

 坂井監督は、やみくもに速くて強いサービスを目指すのではなく、1.5サービスを基本にスピン量と変化をコントロールする練習をすれば、今すぐにでもテニスの組み立て、戦術を変えられると言います。

「1.5サービスは決して消極的なサービスではありません。肘を支点に前腕をしならせるように使うことでボールにスピンを加えます。これでボールはよりサービスラインの深くに落ちて高く弾むため、相手の対応が遅れます」

世界のトッププレーヤーも実践 超ワイドサービスの練習方法

【渡川光二/牛尾英則(ウシオデザイン)】

 さらにより攻撃的にいきたい場面で使いたいのが、リスクを低減させつつ、エースも狙えるワイドサービスです。

「ワイドサービスはコートの端を狙うスピンサービスですが、トッププレーヤーはサービスの立ち位置を外側にずらし、物理的に角度をつけることで、さらに外側を狙う超ワイドサービスを打っています」

 190センチを超えるビッグサーバーであっても、戦略上の理由やセカンドサービス時にはこうしたワイドサービスで相手を撹乱するのが常識になっています。

【渡川光二/牛尾英則(ウシオデザイン)】

「当たり前ですが、こうしたサービスは速く打つ感覚でサービスを何百球練習しても絶対に身につきません。スピン量を意識してボールをコントロールできるようになれば、対戦相手より身長が低い、非力だと嘆いているあなたにもチャンスが生まれるのです」

 最後に坂井監督はワイドサービスの練習方法を教えてくれました。この練習方法はまさに逆転の発想。普通はコートの中から外に向かってサービスを調整していくところを、外から中に! つまりフォールトの位置から調整していくというものです。

「ただの発想の転換ですが、これが意外と大きいんです。インからアウトだとどうしても大胆さに欠けるサービスしか打てなくなる。プロ選手たちにはたとえセカンドサービスであっても『サービスを置きにいく、とりあえず入れる』という概念はもうありません。学生にやらせると一目瞭然ですが、フォールトから始めると角度ある場所にコントロールできるようになります」
 世界のトッププレーヤーたちのテニスが変わっているこということは、アマチュアプレーヤーがまだ気がついていない新しいテニスがあるということ。思い込みや固定概念を捨てれば、ちょっとしたポイントであなたのテニスが変わります。そういう視点で錦織選手やライバルたちのプレーを見ていると、これまでとは違った新たな発見があるかもしれません。

(構成・大塚一樹、撮影:田中伸弥、モデル:志賀正人、イラスト:渡川光二/牛尾英則=ウシオデザイン)

『テニス 世界トップ10も実践する最新の打ち方・戦い方』

【東邦出版】

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著者プロフィール

慶應義塾大学専任講師。1974年生まれ、慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科後期博士課程修了。高校時代はU18日本代表、高校日本代表に選出。大学時代は全日本学生シングルス優勝、ユニバーシアード日本代表、ナショナルチームメンバーに選出。プロ転向後は世界ツアーを転戦し、全豪オープンシングルス出場。世界ランキング最高468位、日本ランキング最高7位(ともにシングルス)。引退後は慶應義塾大学庭球部監督に就任。ATP(世界男子プロテニス協会)公認プロフェッショナルコース修了、ATP公認プロフェッショナルコーチ、日本テニス協会公認S級エリートコーチ、日本プロテニス協会理事を務める

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