WECからF1? アウディの噂を考える=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第34回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

新しい挑戦は早くて2016年か

タイヤメーカーのミシュランもF1参戦が噂される。WECでコンビのアウディと組んで参入するかもしれない 【Getty Images】

 この原稿はアウディのF1参戦を既定事実として書いている。もちろん、アウディ関係者はF1への参戦を否定している。ウルリッヒ博士も同様だ。しかし、噂の元になる情報を集め、WECに参戦しているアウディ関係者の声を聞いた結果として、私はアウディが近い将来必ずF1に参戦してくるはずだという確信を得たので、この原稿を書いた。

 参戦否定の理由はいずれも根拠があやふやで、十分な説得力を有していない。加えて、VWグループの一員であるポルシェがWECに参戦してきて、その存在感を強め始めたタイミングを逃さず、アウディは新しい挑戦を始めるはずである。早くて2016年、あるいは17年? えっ、確信に至った理由? それはF1参戦に関する質問をしたときのアウディ広報部員の表情だ。彼女は「F1? 行かないと思う」と言いながら、私にウインクして見せたのだ。

 ところで、欧州メディアの間で噂になっている、フェラーリでF1チーム代表を務めていたステファノ・ドメニカリのアウディ移籍は、アウディのF1参戦とは直接関係はないようだ。彼はアウディで量産車部門に籍を置く。ただし、F1のトップチームの最前線で指揮を執ったことのある人物を無駄にすることはしないだろう。ウルリッヒ博士も年齢的に退任が迫る。新しい息吹がアウディの中で起こっても不思議ではない。

足下のパートナーはミシュラン?

 F1参入といえばアウディの他にタイヤメーカーのミシュランも噂される。ミシュランは現在、WECとフォーミュラEにタイヤを供給するが、フォーミュラE用のタイヤは早晩ブリヂストンに取って代わられるはずである。ミシュランのフォーミュラEとの契約は2013年から3年間。となると、来年でその契約は切れ、16年からブリヂストンになる公算が強い。そして、そのブリヂストンはMotoGPへのタイヤ供給を15年限りでやめ、16年からはミシュランが取って代わる。この世界2大タイヤメーカーはお互いの腹を探りながらも、トップカテゴリーを行き来している。

 そんな状況下で、ミシュランがF1への参入を狙うのは、現在F1へタイヤを供給しているピレリのサービスに限界が見えているからだ。ピレリは小柄な体質でよく頑張ってはいるが、F1内外から厳しい声も多く、技術的にも物理的にも限界に近い。そこに取って代わるのはミシュランしかいないというのが現状だ。ミシュランは競争のないカテゴリーへの参入はしないと言ってきたが、フォーミュラEへのワンメイクタイヤ供給、ブリヂストン撤退を受けてのMotoGPタイヤ独占供給と、このところ前言を翻す活動が多い。

 それは、最大のライバルであるブリヂストンの主要モータースポーツからの撤退を受けて、業界の頂点に立つ実力を誇示するためにも必要な変容と考えたのではないか。いかなる形でも、世界のモータースポーツをけん引する姿を見せることが、ミシュランにすれば何より重要なのだ。そして、WECで理想的なコンビネーションを組んでいたアウディがF1への参入を果たすタイミングに合わせて、ミシュランが登場するというのが、語られるシナリオというわけだ。

 いずれにせよ、アウディ、ミシュランがF1に出て行くときには、万全の体制で出て行くはずである。そのとき、F1に新しい波が起こることは間違いない。想像するだけでもワクワクする。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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