膨らむ妄想、来季ブレークする選手は? 【動画】阪神・安芸キャンプ第2クール

菅野徹

島本、山本、小嶋の左腕3人に期待

二遊間のレギュラー奪取、ポスト鳥谷への期待も大きい北條は21∪ W杯に出場中 【Getty Images Sport】

 コーチの新顔もまた秋の楽しいところ。濱中治コーチの顔はまだ見えなかったが、藤本敦士コーチのぶかぶかユニホームと初々しいノック、いいね。ケガで苦労し、虎を一度出て、テレビの世界も経験してのコーチ入り。他の「監督候補」が来てくれなくても、小さなことからコツコツと指導者として成長してほしいと思う。久保コーチとそっくりのコースを歩む、香田勲男コーチには巨人を倒す秘策を教え込んでほしい。あるのなら。

 放送最終日の10日には紅白戦が行われた。結果が良かった者、悪かった者とさまざまだが、ともかく来年への妄想が膨らむ「お楽しみ要素」も多かった。

 まず投げる方では、左の3人。大野豊臨時コーチの助言が効いているのかどうかは知らないが、堂々とした投球だった。最終の7回1イニング、残念ながら力みまくって4安打を集中されて2失点してしまった育成の島本浩也。守備の連係の悪さがあって併殺を取り損ねるという不運もあった。しかし最後は連続三振で自分で始末をつけた。背は低いが、ぴゅっと切れる直球を持つ左腕。左打者の内角にきっちり投げる精度がつけば、他にいないタイプだけに働ける。育成卒業間近との報道もあり楽しみだ。

 山本翔也。遅くても制球力で抑えるタイプだったが、球がパワフルになっていた。直球で押し込む投球ができ、2回1安打無失点の好内容。もうひとつ思い切った緩急が使えればなお結構。戦力化しない手はない。

 もう一人は「今さら」という思いをグッとこらえて小嶋達也。相変わらず荒れ球で勝負しているのだが、やはり魅力はある。突然変異は能見篤史の例もある。来年こそだ。

西田、陽川はポジション奪取に挑戦を

 打つ方で目立ったのは2人。まず全打席でチャンスメーク、4打数4安打3得点の西田。巧みなバットコントロールと積極的な打撃で、右へ左へセンターへと打ち分けた。守るのはセカンドとショート。来季はどちらもチャンスがあるだろう。

 もう1人は陽川。こちらもショートとセカンドを守ったが、守備の方はお世辞にもうまくない。前進してのランニングスローは得意なようで器用にこなすが、正面のゴロを腰高、足がそろってエラーする場面があった。しかし打つ方は非凡の一言。第1打席は外低めの変化球を空振りして追い込まれた後、内気味に来る速い球に反応し、コンパクト&レベルな軸回転でレフトの防球ネットの上の方に当てる大ホームラン。解説の掛布DCも思わずヨダレ(笑)。第2打席では外よりの球をライナーでセンター右へ弾き返す。引っ張って飛ばすツボと、反対方向へ強く打つ技術を併せ持つ。サードでWリョウタ(新井良太と今成亮太。両リョウタ、両太とも言う)にチャレンジできるし、ファーストでゴメスにチャレンジする気概が欲しい。

 さらに、ヒットにはならなかったが、サード方向に強烈な打球を連発した一二三慎太、センターオーバーほぼホームランという打球をかっ飛ばした中谷将大。ともに、頭とインパクトポイントの距離を保つ、強打者のスイングを目指しているのがよく分かった。掛布DCの教えだろう。

 台湾遠征中の北條の3ランホームランの映像も見たが、遅い変化球にタイミングを合わせて、レフトスタンドに放り込んでいた。日本シリーズでやられたカーブを打てる男として出てきてくれよ。もともとセンターバックスクリーン方向に放り込むのを基本とする打撃。しっかり力をつけて、来年はポジション奪取への挑戦の時だ。

 本当にそうなると思っているのかって? 当たり前よ。和田豊監督の恐るべき強運により、某誰かさんの思惑はすべて頓挫。あきらめの境地で仕方なく若手を使わざるを得なくなる。すると「戦力は半減したのに、活力は2倍になった」という超面白い状況が生まれ、ブレーク、ブレークまたブレーク。今年からは想像もつかないレギュラーができあがる……。まあいいじゃない、今くらいはそんな妄想をしたって。

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著者プロフィール

フリーライター。野球、鉄道、広告コピーなどを中心に雑誌等で執筆中。旧筆名は「鳴尾浜トラオ」。阪神タイガース評論家を自称する。ブログ「自称阪神タイガース評論家」は2003年12月からほぼ毎朝更新中(ただし10〜12年は、阪神タイガース公式携帯サイトにて「トラオの視点」として連載)。著書に『虎暮らし』(2008年/扶桑社)がある。

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