“秋華”パンドラ新ヒロインに名乗り 3歳牝馬戦線、勢力図は変化したか?

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お見事! 浜中の好騎乗光る

JRA年間100勝も達成、若武者・浜中は見事な騎乗だった 【スポーツナビ】

 浜中の手綱も見事だった。この秋華賞の勝利がちょうどJRA年間100勝という区切りの1勝にもなったのだが、戸崎圭太、岩田に続く全国リーディング3位の腕は伊達ではない。好スタートから浜中が確保したポジションは、ちょうど中団の最内。前半1000mの通過が58秒0というハイペース激流の中、固まった先行集団を見るように1頭ポツンと縦長の隊列の真ん中で悠々とラップを刻んでいた。
「これで負けたら仕方ない。納得の位置取り」と高野調教師。一方、馬上の浜中は「変に外を回さず、内でジッとしながら立ち回ろうと3コーナーから行きました。GIですし、ある程度のリスクを背負わないと勝てない。迷わず内を突いて行きました」。

 一歩間違えれば、前も横も完全に進路がふさがれてしまう淀の小回りコーナー。勝負所を迎え、目の前の先行集団もさらにゴチャついている。それでも浜中は最内にこだわり、勇気を持って馬群に突っ込んでいった。
「4コーナー手前の、一番難しいところをうまくさばくことができましたね。あそこで、これは行けるんじゃないかと思いました」
 最内の利点を最大限に生かす絶妙ハンドリングで、一瞬にして先頭集団に躍り出た浜中とショウナンパンドラ。勢いを殺すことなく最後の直線も一直線に伸び、最大のライバル・ヌーヴォレコルトをクビ差抑えたところがゴールだった。もし、ヌーヴォレコルトと足並みをそろえるように外を回していたら、おそらくこの勝利はなかったのではないか。

「いやあ、勝つときはこういうもの。うまくいった分、勝てたと思いますし、馬が頑張ってくれたことに尽きます」
 浜中はそう謙遜するが、僕の目にはショウナンパンドラの頑張りと同じくらい、25歳の若武者の騎乗は光っていた。そして、浜中とショウナンと言えば、忘れられないのが昨年の安田記念。ハナ差で泣いたショウナンマイティとのコンビだ。その悔しい経験があるからこそ、同じ勝負服でのこのGI勝利の味は、また格別なものだろう。

3歳牝馬、最強は誰か?

次走は順調ならばエリザベス女王杯か、今後の活躍に期待が広がる 【スポーツナビ】

 桜花賞、オークス、秋華賞と、三冠すべてを分け合った2014年の3歳牝馬戦線。桜花賞馬ハープスターとオークス馬ヌーヴォレコルトの2強体制の確立に、ショウナンパンドラが“待った”をかけてのフィナーレとなった。3歳牝馬の勢力図に変化はあったのか? 世間的な評判はそれでも「ハープスターが一枚上」だろうか? それとも「ハープスターとヌーヴォレコルトの2強は変わらず」だろうか?

 レース前、何気なくターフビジョンを眺めていたら、『秋華』とは中国の詩人である杜甫、張衡が用いた言葉で、『秋』は大きな実りを表し、『華』には名誉、盛り、容姿が美しいという意味が込められている――そんな解説が映し出されていた。今思えば、これはまさに遅咲きのショウナンパンドラそのもののことを言っているようだ。
「すばらしい能力を持った馬ですので、とにかくこのまま無事に行ってくれたら、それでいいと思っています」と高野調教師。一方の浜中も「完成の域に来ていると思う。GIを勝ったことで彼女にも自信がつくでしょうし、このままどんどん強くなってくれることを願っています」と、今後への期待はどこまでも大きい。

 誰がこの世代最強の牝馬なのか、それはやっぱり3頭の直接対決で決めるしかない。いやいや、2歳女王レッドリヴェールの存在もまだまだ忘れてはいけない分、それも含めて今一度、この世代の牝馬オールスター戦を見てみたい。ただ、ハープスターが次走にジャパンカップ(11月30日、東京2400メートル)を予定している分、すぐにでもこの直接対決の実現は難しいところが、ちょっと残念なところではある。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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