アジアのレベルアップに貢献する日本
サッカー発展途上国を率いる指導者たち

発展途上国に指導者を派遣

日本はサッカー発展途上国に指導者を派遣。アジア大会では日本人指導者同士の対戦が実現した
日本はサッカー発展途上国に指導者を派遣。アジア大会では日本人指導者同士の対戦が実現した【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 海の向こうから見るなでしこジャパンは、強くまぶしい存在だ。現在、韓国・仁川で開催中の第17回アジア大会において、サッカー日本女子代表は順調に勝ち進んで決勝戦へと駒を進めた。初戦の中国戦では引き分けたが、その後はFIFA(国際サッカー連盟)ランキング3位(2014年9月19日付)の肩書きにふさわしい危なげのない勝ち方を見せており、あらためてアジアにおける絶対的な強さを示している。


 その姿を対戦相手の立場から見た2人の日本人指導者がいる。グループステージで日本が対戦したヨルダン、チャイニーズ・タイペイは、それぞれ沖山雅彦、柳楽雅幸という日本人監督に率いられていた。JFA(日本サッカー協会)は自国の代表を強化する一方、アジアのリーダーとしての役割を担うべく、サッカー発展途上国に指導者を派遣している。日本とはまるで異なる環境や文化の中でなでしこジャパンを追いかけようと努力する彼らにとって、アジア大会、そして日本との対戦はいかなる意味を持つのだろうか。

すべてが大きく違うヨルダン

ヨルダンを率いる沖山監督(右)。日本には大敗したものの、戦い抜いた選手を称えた
ヨルダンを率いる沖山監督(右)。日本には大敗したものの、戦い抜いた選手を称えた【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 ヨルダンは、日本が第2戦で12−0と記録的な大勝を飾った相手だ。得点する側は何の問題もないが、やられる方はたまったものではない。それでも、ヨルダンを率いる沖山監督は「結果的には大差で負けたけれど、自陣のゴール前で体を張って守ることと、パスをつないで攻撃をしていくというハーフタイムの指示には、しっかりとトライしてくれた。選手は精神的に厳しかったが、僕の要求には応えてくれていた。試合中に選手同士で位置を変えて自分たちで発展させようとした姿もあり、僕がヨルダンに来てからの2年半で一番感動させてくれた試合。選手にはありがとうと伝えた」と戦い抜いた選手を称えた。


 12点も取られてよくやったなんて目指す基準が低い、と思われる方がいるかもしれないが、ヨルダンが置かれた状況を考えれば、努力の成果は大差の敗北の中にも見られるようだ。なにせ、スタート地点も強化環境も常識も、すべてが大きく違う。沖山監督の話では、ヨルダンの公立校では、女子には体育の授業がないという。


「運動能力は低いと思います。動けないし、走れない。最初は(以前に監督を務めていた)JFAアカデミー福島女子でやっていた(基礎練習の)パス&コントロールを3分やらせたら、座り込んでしまった」(沖山監督)というのがスタートだ。フィジカルトレーニングを導入して弱点を克服しようとしても、イスラム教特有のラマダンという断食を行う時期があり、筋力が落ちてしまう。コンディション管理の難しさは、日本の比ではない。


 そんな環境で四苦八苦している沖山監督に、なでしこジャパンや日本の女子サッカー界について聞くと「日本は、男子と同じように普及や育成が計画的にできていて、組織化されている。画一的だという指摘はあるかもしれないけれど、間違いなくベースは上がっている。われわれは(国内リーグがなく)、東アジアの国との試合を通じて刺激を受けている環境だが、日本は国内リーグで切磋琢磨している。もちろん、アジアも私たちのように少しずつ強くなろうとしているし、世界は黙っていないから、日本ももっと強くならないと世界王者で居続けることはできないだろう。けれど、対戦して初めて、これが世界チャンピオンなんだなと思う。うまいですよ」とどこか悔しそうでもあり、うれしそうでもある表情で話した。


 ヨルダンは西アジアの強国だが、まだ東アジアのレベルとは大差がある。その中で沖山監督たちは、地域のレベルを上げるために努力を続けている。

平野貴也
平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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