「組織が良くなって成績も良くなった」=強化育成担当に聞く 卓球・倉嶋洋介監督

構成:スポーツナビ

海外意識を高めた自費参加制度

体力強化を進めるべく、4年前からフィジカルトレーナーがNT入りしている 【スポーツナビ】

――「国際競争力のさらなる向上」も強化方針に挙げられています。水谷選手や丹羽選手など、海外リーグに参加される選手もいますが、選手にはどんなメリット・デメリットがありますか?

 毎週、ヨーロッパや他の国から来たトップ選手たちと試合ができることですね。日本にいると大会は1カ月に1、2回ですが、彼らの場合は毎週試合があって、その試合に向けて1週間頑張る。だからモチベーションが全然違います。さらにトップの選手との対戦で経験値が上がるのも、とても良い面です。
 ただ、ヨーロッパのクラブのシステムがまだはっきりしてないので、食事などの自己管理ができないと体も成長していかないし、僕らが言っているフィジカル面でも成長していかないことがあるのは、少しデメリットかなと思います。

――トップ選手でなくても国際大会への自費参加を認める制度がありますが、どのように機能していますか?

 ワールドツアーというのがあるのですが、協会の限られた予算で代表を選びますよね。するとスタッフ込みでだいたい5、6人しか連れて行けないわけです。そうすると他の選手や若手選手は出られません。なので、4年ほど前に自費参加制度を作りました。「大会側がよければ自費で参加していいですよ」というもので、より多くの国際大会の経験を積むことができます。意識を海外に向けさせるための施策としてやっていて、今はすごく成功しているんじゃないかなと思います。
 ただ、誰でも出れらるというわけではなく、国内成績などの基準があります。その基準に従って、出られる人を出させています。

――自費となると、選手にとっては経済的負担も大きいと思いますが?

 でも、おそらく8割方は所属先が(経費を)出してくれていますね。高校生であれば、親が出している可能性がある子も数人いますが、今は自費参加制度ができたので、会社に入る時に「年間でこれだけ(大会に)出させてください」とお願いをしてから入ったりしているようです。選手も事前に出るという気持ちでいると思います。

――自費参加制度の有無で、選手のモチベーションも大きく変わりますね。

 かなり違ってくると思います。国内で結果を出さないと出られないこともあるので、国内の試合もおろそかにできないし、良い効果があるのではないかと思っています。

「環境が整えばそれだけ組織も成長する」

――強化育成を進める上で「ワールドランキングに関わる年間の大会数の多さとチャンピオンシップ大会との調整」が大きな課題と聞いています。代表選手がNTとして試合や合宿に参加するのは具体的にどれくらいですか?

 NTの合宿自体がだいたい150日、多くて200日です。国際大会(への参加)がNTの場合は平均月1.5回でしょうか。なので、だいたい(試合に割く日数は)100日ぐらいですかね。合宿をやって海外遠征行っての繰り返しで、合間に自分の所属母体に帰って国内大会に出場します。

 試合数の多さは僕らも気をつけないといけません。大会数を減らして、ポイントポイントで良い大会を選びながら出場させてくのが僕らの仕事だと思います。ジュニアの選手に関しても、試合だけだと成長しないと思うので、うまく練習をさせながら遠征をさせていくといった計画性はすごく大事ですし、いつも心がけています。

――コーチ時代から数えると、倉嶋監督がNT入りして今年で4年になります。これまでに行った強化の取り組みで、選手たちに見られた成長や変化を教えてください。

 一番僕が大きく感じるのは、4年前にフィジカルトレーナーを入れたことが、日本卓球界にとってかなり変わってきた部分じゃないかと思います。
 また、08年にNTCができて、国内でしっかりと強化ができるようになったというのが大きいと思います。北京五輪前までは、お金がかかるので回数は少なかったですが、いろんなところに行って合宿をやっていました。でも、NTCにいれば、お金はかかるけど安いですし、国からの援助も出ます。他のスポーツもそうですが、環境が整えばそれだけ組織も成長しますね。

 やはり結局は組織力です。中国があれだけ強いのは、組織がしっかりしているし巨大だからなんですよ。日本も組織が良くなってきているから、成績も良くなってきている。ヨーロッパのドイツ以外が衰退しているのは、組織がうまくいっていないから。(選手育成の)組織やシステムをしっかりするというのも、競技を発展させていくには大切なことだと思います。

――アジア大会が直前に迫っていますが、リオデジャネイロ五輪、東京五輪を見据えて、どのような大会にしたいですか?

 中国といい勝負がしたいですね。そこまで行くのは大変ですが、「中国に対していい勝負をした」という自信を徐々につけて、それを乗り越えてリオや東京を迎えていかないとやはり勝てないと思うんですよね。また、「それ以外の国には絶対に負けちゃいけない」という心構えも必要だと思います。

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