安楽智大が身につけた新たなスタイル、新球「スプリット」を武器に最後の夏へ
開幕直前の7失点も強気な姿勢は崩さず
7月6日、明徳義塾高との練習試合で力投する安楽 【寺下友徳】
そして6月の追い込みを経て「1回ピークに持っていきたい」と話していた7月第1週の練習試合。5日の鳴門渦潮高戦で安楽は圧巻のピッチングを見せる。9回4安打完封、6奪三振も与えた四球はわずか2。球数も96球。完璧であった。
翌日の明徳義塾高戦では一転、7回1/3を投げて2本塁打を含む13安打で7失点と打ち込まれ、「あとは本番を待つしかない」と首をかしげた上甲監督をはじめ、周囲に不安を残した形となった。しかし「この3週間はずっと調子が良かったので、こういう試合は来ると思っていた」と強気な姿勢は崩していない。その流れは1年以上彼に密着しているプロ野球のスカウトたちも理解していることだ。
「昨日の良い時を見ているし、愛媛大会でも見ることができるのでしっかり見ていきたい」
5年前は最速150キロ右腕・秋山拓巳を追い続け、「石仏」呉昇桓の獲得にも大きく関わった阪神タイガースの山本宣史・中四国担当スカウトは、直球派の心情を知る者だからこそ、短い言葉で彼への評価が不変であることをにおわす。
甲子園出場だけを考えて腕を振る
「野球は結果が全てのスポーツ。それで結果が出なければ自己満足に過ぎない。でも、やりきった自信はあります」
プロ野球の世界と同じく「結果が全て」となる最後の夏。最速157キロから波乱万丈の1年を経て、精神的にも肉体的にも「強さ」を備えた安楽智大は、7月15日・西条市ひうち球場のマウンドで、三島高を相手にチームを甲子園に導くべく、そしてチームの結果で自らの未来を切り開くべく、思い切り腕を振る。