登頂しない富士登山の楽しみ方 四角友里のゼロからの山歩き 第3回

四角友里

「ここって富士山?」と問いたくなるような森歩き

【写真提供:四角友里】

 馬返しから鳥居を抜け、凛とした面持ちで歩き出すと、そこには緑が弾ける森が!! 私が抱いていた富士登山の荒涼とした褐色のイメージとは真逆の、生命感溢れる世界に驚きました。

 ブナやカラマツの緑が、空を覆うように深い森を織り上げ、足元には苔の絨毯が広がります。そして標高をあげると針葉樹が多くなり、植生の変化も味わえます。

 古来、浅間神社〜馬返しまでが「草山」、1〜5合目までが「木山」、5合目から頂上が「焼山」と呼ばれてきたそうで、この木山エリアを存分に堪能できるのが、吉田口登山道の5合目までの道。懐の大きな富士山の裾野に息づく、豊かな森歩きなのです。

【写真提供:四角友里】

富士山の長い歴史の時間軸の中へ

【写真提供:四角友里】

 道中には、御室浅間神社、茶屋や小屋の跡、石碑など、歴史の史跡も残ります。

 江戸時代を中心に参詣路としてたくさんの人が行き交ったこの登山道は、標高差854m、約3時間半(休憩含まず)の道のりですが、比較的傾斜がゆるく作られ足場も整っているため、のんびりと歩くことができるコースです。この日は、地元ハイカーやお子さん連れのご家族に会いました。

「下山はバス」がうれしい! “富士下山”もアリなんです!

【写真提供:四角友里】

 そして今回のゴールは、現代は人だけでなく車も行き交う富士スバルライン5合目! おみやげ屋もいっぱいで“下界”に下りて(実際は登っているが)きた感じ。けれど、そのおかげで、登山にもれなく付いてくる「下山」という行為がないのです。直行バスで新宿まで帰宅の途につきました(※運行状況は要確認)。

【写真提供:四角友里】

 体力に不安がある人は、スタートを5合目とし“下山する山歩き”もよし。頂上へは7月〜8月までが一般的な夏山登山シーズンとなりますが、この麓から5合目までは、5月下旬〜10月まで楽しむことができます(※残雪状況をチェック)。「富士山に行ってみたい」という友人にぜひおすすめめしたい、私のとっておきのルートになりました。

この美しい森も富士山の一部

 体力や技術に不安があれば、頂上へ行かなくても日本一の富士山を感じることはできます。だってこの美しい森も富士山の一部。「富士山へ行ってきたよ!」と胸をはって言えるのですから。

 無理のないプランをたてることも、山の神様への“畏敬の念”の表現方法のひとつ。「いつかは日本一の山頂へ!」という気持ちを、じっくりと熟成させていくのも素敵ですよね。

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著者プロフィール

アウトドアスタイル・クリエイター。「大好きな自然と、自分らしいスタイルで繋がりたい」というメッセージを掲げ、執筆、トークイベント、アウトドアウェアのプロデュースなどの表現活動を続ける。『朝日新聞』、『日本シェアリングネイチャー協会』などで連載をもつ。2010年、ニュージーランドの永住権を取得。日本とニュージーランドの山歩きをライフワークとしている。山スカートの第一人者、着物着付け師の顔も持つ。著書に、ライフスタイルエッセイ『デイリーアウトドア』(メディアファクトリー)、自身の試行錯誤から学んだ山のノウハウが満載の『一歩ずつの山歩き入門』(エイ出版社)がある

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