際立つアメリカ大陸の優位とカウンター 変化を感じさせたグループリーグを総括

西部謙司

3バックの復活と4CBの活用

ウルグアイ勝ち抜けの原動力となったスアレス。大会のスター候補は、グループリーグで去ることになってしまった 【写真:ロイター/アフロ】

 ポゼッション型で生き残ったドイツは、大会前の予想よりもバイエルン・ミュンヘン化していない。ヨアヒム・レーブ監督が傾倒するジョゼップ・グアルディオラ率いるバイエルンのように、ポジションをローテーションしながらのパスワークを披露するという予想もあった。ところが、4バックにCBを本職とする選手を並べた。フィリップ・ラームのボランチ起用はバイエルン風ではあるが、4バックが全部CBタイプではローテーションのしようがない。

 バイエルン風なのは中盤から前だけで、前後に役割分担が明確な構成になった。ただ、カウンターアタックへの対策として、4CBは有効だったといえるかもしれない。ベルギーの4バックも全員CBだった。単にサイドバック(SB)の人材不足のせいかもしれないが。

 一時は廃れた感のあった3バック復活も変化の1つだ。守備時には5バックにして分厚く守る。オランダ、メキシコ、チリ、コスタリカが3バックでベスト16進出を果たした。

スーパースターとニュースター

 アルゼンチンは完全にリオネル・メッシ中心のチームに変わった。4年前もエースだったが、今回はメッシを生かすための編成に徹している。

 アルゼンチンはディエゴ・マラドーナやファン・ロマン・リケルメといったエンガチェ(10番の選手)を中心にしてきた伝統があるが、今回はとくにメッシありきのチームだ。たとえGKと変わらない運動量であっても、ここという場面では決定的な仕事をする。守備やハードワークはチームメートが負担し、メッシには得点とチャンスメークで力を使ってもらおうという共通理解ができている。

 コロンビアのハメス・ロドリゲスの役割はメッシに似ていて、カウンターアタックの起点として技巧とセンスを発揮する。ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドは負傷の影響でベストコンディションではないうえ、初戦のドイツ戦でペペ退場の影響でチームは惨敗。左SBと1トップが2人ずつ負傷欠場する不運も重なってチームが波に乗れず。ロナウドは得点、アシストと気を吐いたが限界だった。

 負傷から回復して大活躍したルイス・スアレスは、ウルグアイ勝ち抜けの原動力となった。しかし、イタリア戦でジョルジョ・キエッリーニに噛みついたことで試合後に9試合出場停止の処分が決定。大会のスター候補だったが、グループリーグで去ることになった。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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