山口が軸となるボランチ、相方は誰に!? W杯初戦への試金石となるザンビア戦

清水英斗

アドバンテージとなるアフリカ勢との対戦

ここ2試合で連続フル出場を果たしている山口は、すでにボランチの軸になりつつある。注目すべきは相方か 【Getty Images】

 一方、やはりザックジャパンとしては、この試合の目的は『仮想コートジボワール』に違いない。

 ザッケローニ監督が「(ザンビアの)フィジカルはおそらく、うちよりも上」と語るように、一歩深いところまで飛び込んでくる、当たりが強い、足がもう一歩伸びてくるといった、アフリカ人選手特有の競り合いを経験しておくことは、初戦に向けた大きなアドバンテージと言える。

 ザックジャパンがすべての手の内をさらしてしまうことはないと思うが、ここで出場した選手が、コートジボワール戦のスタメンのベースになることは想像に難くない。1トップには柿谷曜一朗か、大迫勇也か。GKは西川周作を試してほしい気持ちもあるが、もし、それをやっておくならキプロス戦だったはず。おそらく川島永嗣が3戦連続でGKを務めるのではないだろうか。

 また、前日練習で別メニューとなった長友佑都が不出場となると、左サイドバックはコスタリカ戦に続き、今野泰幸が務めるのか。ひざの炎症により別調整となっていた酒井高徳が復活するのか。本番は長友が出場すると思われるが、ザンビア戦ではおそらくピンチヒッターが必要になるだろう。

ボランチの軸になりつつある山口

 そして、注目はボランチの組み合わせだ。練習に復帰したばかりの長谷部誠は、まだ実戦は厳しそうだが、ここ2試合で連続フル出場を果たしている山口蛍は、すでにボランチの軸になりつつある。コスタリカ戦では前へ出てインターセプトをねらう動き、後ろへ下がってスペースを埋める動き、攻撃の組み立てでディフェンスラインへ下がってボールキープする動きなど、積極的なプレスからリスクマネジメントまで、戦術的に効果の高いプレーが多く見られた。それについて山口自身は次のように語る。

「コーチングする部分と、自分の判断でボールに行くところ、カバーするところなどは、個人の判断でやっているところが多いです。ポジショニングも、監督からはそこまで細かくは言われていないですね」

 そこまで細かくザッケローニ監督から指示されていないことは、同じボランチの遠藤保仁も口にしている。逆に、1トップの大迫の場合は「どれだけ自分らしさを出せるかは、代表での課題だった。型にはめられて、とらわれすぎている自分がいたから、そこは変えていかなければ」と、まったく逆の感想を語っている。同じようなことは、もうひとりの1トップ、柿谷もかつて悩んでいた。

 つまりザッケローニは、前線の選手に対し、相手の特徴に合わせてプレッシングのスイッチを入れるためのファーストディフェンスなど、細かい要求がどうしても増える。しかし、その後の流れは相手のプレーによって無数の選択肢に分かれるため、細かくプログラミングしても追いつかないと考えている。そのため、戦術的なインテリジェンスのあるボランチが柔軟にバランスを取るしかない。今はそれを山口が最もうまく実践している。

 その山口とペアを組むのは、緩急をつけながらパスを散らして試合をコントロールする司令塔の遠藤か。それとも一瞬の隙を逃さない縦パスの狙撃手、青山敏弘か。遠藤の場合はある程度、対戦相手を押し込める流れのときに有効になるので、ギリシャ戦で力を発揮するのではないだろうか。一方の青山は、たとえばコスタリカ戦の前半のように、ラインを高く保って向こうからも日本を押し込んでくるような対戦相手のときに、狙撃手としての一発のキラーパスが光る。それが功を奏するのはコロンビア戦だろうか。となると、コートジボワール戦は……?

 ケガ人の状況もあり、仮想コートジボワールのザンビア戦のスタメンがそのまま本番に並ぶことは考えにくい。ただし、ボランチコンビに関しては、そのまま本番でも起用されるのではないかと個人的には予想する。ザック自ら「チームの心臓」と表現するボランチは、そのプレーヤーの個性に頼るところが大きいからだ。ザンビア戦でどのような組み合わせを送り出すのか!? ザックのボランチ起用に注目したい。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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