川澄、洗練された米国リーグで武者修行
再び世界一になるために必要なもの――
4月の開幕以降、中心メンバーとして5試合に出場。米国特有の“1対1の強さ”は「チャレンジの部分」と成長を図る
4月の開幕以降、中心メンバーとして5試合に出場。米国特有の“1対1の強さ”は「チャレンジの部分」と成長を図る【写真は共同】

 今季から、なでしこのエースストライカー川澄奈穂美が米国女子サッカーリーグ「ナショナル・ウィメンズサッカー・リーグ(NWSL)」のシアトルレインFCに加入。4月中旬の開幕以降、川澄はチームの中心として5試合に出場、1ゴール、2アシストの記録を残すと、チームは開幕6連勝と圧倒的な強さを見せている。


 チームメートには、米国代表のGKホープ・ソロ、DFステファニー・コックス、FWシドニー・ルルーのほか、2011年ドイツワールドカップ(W杯)で米国代表だったMFミーガン・ラピノーなどそうそうたるメンバーがそろう。米国女子サッカーの現状とともに、川澄の米国でのプレーや評価を紹介したい。

3度目の正直の女子サッカーリーグ

 米国女子サッカーについて少し説明したい。NWSLは米国、カナダ、メキシコの各サッカー協会の支援により13年に設立され、現在9チームが4月の開幕からホーム&アウェーで計24試合を行う。


 ちなみに米国女子サッカーリーグは、01年に現在のリーグの前身となる「WUSA(ウィメンズ・ユナイテッド・サッカー・アソシエーション)」が設立され、澤穂希(INAC神戸)がアトランタ・ビートでプレーしていた。しかし、経営難により3シーズンでリーグが休止に。

 その後09年、「安定した経営と地域密着」を目標に「WPS(ウィメンズ・プロフェッショナル・サッカー)」として衣替えし再始動。しかし再び、諸般の事情で12年に再び休止を余儀なくされた。そのWPSでは、国際ドラフトで指名された澤、宮間あや(岡山湯郷)ら、日本人選手もプレーしていた。


 現リーグNWSLは前述した3カ国のサッカー協会が、女子サッカー選手のプレーする場の獲得とともに、世界大会での活躍を期待し、支援をしている。持続可能なリーグの確立も目標とされ、米国サッカー協会が自国選手の給料を負担するなどし運営している。またチーム力が均等になるように、代表選手を平等に配分するなどの工夫もされている。


 現在、日本人選手は川澄のほかに、木龍七瀬(スカイ・ブルーFC)、鮫島彩(ヒューストンダッシュ)と3選手が所属しているほか、スカイ・ブルーFCではなでしこリーグのINAC神戸で監督だった石原孝尚氏がアシスタントコーチを務めている。

大きく変化した米国サッカー

 01年にWUSAが始まった際は、「フィジカル重視」なプレーをするチームが多く見られた。体をフルに使った空中戦、危険なスライディングなどを多用するチームも多く、毎試合イエローカードが飛び交っているイメージがあった。澤もアトランタ時代にヘディングで脳しんとうを起こし、病院でMRI検査を行ったほどだ。


 米国サッカーの持ち味は「フィジカル&スピード」。体当たりで奪ったボールを一気にFWに回し、カウンターで得点という“セオリー”を得意としていたことからも分かるように、DFやMFは体格のいい選手、FWはアビー・ワンバックのようなゴール前の空中戦で競り合える長身選手や、カウンターに対応できるスピードのある選手という布陣が多かった。フィジカルとスピードに頼りすぎて、細かなパス回しや個々のボールさばき、精密さなどは他国に劣る部分もあった。


 しかしここ数年、米国女子サッカーは非常に洗練されてきている。極端に体を使った、時に相手に致命的なケガを負わせるようなプレーは減り、MFを中心に細かくボールを回しながらゴールを狙うサッカーに変化。さらに以前は、FWやMFが守備に加わらない場合も多かったが、その点にも変化の傾向が見られる。


 澤や川澄の代理人を務める尹台祚(ユン・テジョ)氏も「米国女子サッカーはこの10年で大きく変わりましたね」と話す。

 特に米国が11年ドイツW杯で日本に敗れた後、米国代表はなでしこのプレーを研究し、実戦でもボールのポゼッションや細かいパス回しなどを意識しているようだ。

及川彩子

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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