木村沙織も実践したスランプ脱出法=バレー眞鍋監督・女子力の生かし方 第7回
ルーティンを加えて気持ちを切り替える
目標達成への手間は惜しまないと語る眞鍋監督 【スポーツナビ】
さらに、メンタルトレーナーの力も借りました。話し合った結果、ミスを引きずらずに気持ちを切り替える術として、ルーティン(決まった作業や習慣)を加えることにしました。相手のサーブが飛んでくる前に、深呼吸をしてレシーブの素振りをするかのように手を組み、親指と親指を重ねます。
バレーボールは、“間”があるスポーツです。ボールが落ちてから次のサーブまでの“間”をうまく利用すれば、気持ちの切り替えができます。審判が試合再開の笛を鳴らすまでの10〜15秒ぐらいの間に、木村はこの“儀式”を取り入れて気持ちを一旦リセットし、悪い流れを断ち切れるようになりました。
勝つための妥協なきこだわりが必須
3カ月ほどかかりましたが、木村はスランプから脱却しました。技術やメンタルなどあらゆる方面からのアプローチはもちろんですが、荻野の力も大きいと感謝しています。
私たちの最終目標は、選手たちが最高のパフォーマンスを発揮して、五輪でメダルを獲得することです。そのゴールに向けてあらゆる可能性を考えながら、よりよい手段を徹底的に探して試します。そのための手間は惜しみません。私一人のアイデアや力なんて知れていますから、目標達成のためには人の力も借りる。思考の幅が広がると同時に、問題解決につながる手段も増えます。さまざまなハードルを飛び越えるためには、勝つための妥協なきこだわりが必須だと考えます。
<この項、了>
プロフィール
1963年兵庫県姫路市生まれ。大阪商業大在学中に神戸ユニバーシアードでセッターとして金メダルを獲得し、全日本メンバーに初選出。88年ソウル五輪にも出場した。大学卒業後、新日本製鐵(現・堺ブレイザーズ)に入団。93年より選手兼監督を6年間務め、Vリーグで2度優勝。退団後、イタリアのセリエAでプレーし、旭化成やパナソニックなどを経て41歳で引退。2005年に久光製薬スプリングスの監督に就任し、2年目でリーグ優勝に導いた。09年全日本女子の監督に就任し、10年世界選手権で32年ぶりのメダル獲得に貢献。12年ロンドン五輪、13年のワールドグランドチャンピオンズカップで、それぞれ銅メダルに導く。