名馬とともに『忘れられない記憶』が甦る=メモリアルホース投票はJRAの快ヒット

橋本全弘

今年は“スペシャルイヤー”

ナリタブライアンが7馬身差圧勝で三冠を達成した1994年の菊花賞も忘れられない思い出だ 【写真は共同】

 今年、創立60周年で、しかも、12年に一度の「午年」が重なるというまさに“スペシャルイヤー”を迎えたJRA。この60周年を記念して様々なイベントや式典が予定されているようだが、そんな中、15日に始まった「JRA60周年記念競走メモリアルホースファン投票」はなかなか面白い企画であるばかりか、オールド競馬ファンにとっては楽しかった競馬シーンをしみじみと思い出させる楽しいイベントである。

 これは、北は北海道・札幌競馬場から南は九州・小倉競馬場までのJRA全10競馬場で行われる代表的なレースに対して今年に限り「JRA 60周年記念○○○○競走」の冠名をつけて実施するというもので、その冠名にはそれぞれのレースの過去の優勝馬の中からファンに投票してもらって一番多く票を集めた馬の名前が冠名としてつけられ実施するというものである。

遠い過去のあのレースシーンが脳裏に甦って来る

各競馬場と指定レースを挙げていくと

札幌競馬場=札幌記念
函館競馬場=函館記念
福島競馬場=七夕賞
新潟競馬場=新潟記念
東京競馬場=天皇賞(秋)
中山競馬場=皐月賞
中京競馬場=チャンピオンズカップ(昨年までのジャパンカップダートがレース名変更)
京都競馬場=菊花賞
阪神競馬場=宝塚記念
小倉競馬場=小倉記念

 この10レースの過去の優勝馬からそれぞれでファン投票を行い得票数が1番多かった馬の名前を冠名として採用、また優勝馬に付けるキャッチコピーも併せて募集するというものである。

 長くこの世界で仕事をしてきた私はすぐ、これはなかなか面白い……と直感したが、まさにオールドファンにとってはベストの企画といってもいいだろう。
 早速、ウインズへ出向いて専用の投票用紙を取り寄せてきた。それぞれのレースの優勝馬の馬名が第1回から網羅してある。
 その馬名を一年一年チェックしていくだけで、遠い過去のあのレースシーンが脳裏に甦って来る。
 どんな競馬ファンにとっても、それぞれ馬券が的中したあの感動や興奮によって大好きな馬が出来、思い入れが入り、『忘れられない馬』が出来てくるものである。そして、その馬名を目にしただけで何年も前のあの忘れられない記憶が甦ってくるものである。

シービー、メジャー、そしてライアン!

 私自身も皐月賞や天皇賞・秋の優勝馬名をチェックしながら、過去の思い出が走馬灯のように頭に浮かんできた。
 天皇賞・秋、ロンググレイス以下を豪快に差し切ったミスターシービーのあの末脚は今でもはっきりと覚えているし、皐月賞では強豪相手に鮮やかに逃げ切った伏兵ダイワメジャーの勇姿が思い出される。菊花賞では皐月賞以来の復帰戦として臨んだサクラスターオー、そして宝塚記念は横山典騎手とメジロライアンのコンビが忘れられない……。あの年の皐月賞が、あの日の菊花賞が、宝塚記念のあの瞬間がその馬名を見るだけで頭の中に巡ってくるのである。

 まさにこれこそ60周年記念にふさわしい記念イベント。ここ数年、巨乳タレントが“走る”グラマラスカップや、人気アニメ『エヴァンゲリオン』『進撃の巨人』とのコラボCMなどおよそ競馬とはかけ離れた企画やイベントが次から次へ出てきて、ウンザリしたものだが、今回の企画はとてもいいものだとJRAに拍手をおくりたい。

 さらに投票参加者には抽選により賞品も用意されている。A賞総額60万円分の買い物ツアー、B賞皐月賞招待席&旅行券、C賞60周年記念オリジナル切手シート……となかなか豪華なものだが、競馬ファンとして、こういった時にこそ、プレゼントしてもらいたいのが「馬券購入資金」。競馬法等の問題で難しいのだろうが、競馬ファンにとって一番の楽しみは馬券を買ってレースを見ること。例えば『馬券購入資金1万円』をプレゼント! なんていうのがあればファンにとっては一番ありがたいのである。

 これは難しい話としても、とにかく今回の「メモリアルホースファン投票」はJRAとって久々にヒット企画のように思うのだが、皆様、如何でしょうか?

 ちなみにファン投票の中間発表は27日、投票締め切りは3月9日までとなっている。
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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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