アイスダンスカップルの世界観がさらに発揮されるのが、フリーダンスだ。エレガントでロマンティックなものがあったり、ストーリー性のあるダイナミックなものがあったりと、毎シーズン、自分たちの世界観を大切に演技している。

　プログラムには大きく分けて２つの傾向がある。１つは、使う音楽などに合わせて、演技の中にストーリーが感じられたり、選手たちが何かになり切ってダンスしたりするもの。今シーズンは、デービス＆ホワイトの「シェヘラザード」や、ペシャラ＆ブルザ（フランス）の「星の王子さまと彼のバラ（というテーマで滑る）」、カッペリーニ＆ラノッテの「セビリアの理髪師」、日本代表・リード姉弟の「Ｓｈｏｇｕｎ」などが挙げられる。もう１つのタイプは、音楽をそのまま表現するもの。バーチュー＆モイヤー（カナダ、バンクーバー五輪金メダリスト）のバレエ曲「四季」などは独創的。ボブロワ＆ソロビエフ（ロシア）のビバルディの「四季」や、ウィーバー＆ポジェ（カナダ）のアストラ・ピアソラメドレーも、音楽から彼らがイメージする世界を作り上げていく。

　こんな風にアイスダンスを見ていくと、「この２人は恋愛関係にあるんだろうか」と思うこともあるだろう。過去を振り返ると夫婦カップルや恋人カップルも多かったけれど、今回ソチ五輪に出場する上位カップルは、プライベートでは、ほとんど皆、別のパートナーがいるようだ。氷の上では愛し合っている濃厚な男女の雰囲気を漂わせていたのに、演技後はあっさりしているのも、また一興だ。

　ソチ五輪での金メダル候補は、上記のデービス＆ホワイトとバーチュー＆モイヤーの２組に絞られる。バンクーバー五輪でデービス組が銀メダル、バーチュー組が金メダルを獲得してから、昨シーズンの世界選手権まで、この２組が金と銀を交互に獲得している。また、日本からは昨年９月の五輪予選で出場枠を獲得した、キャシー・リード＆クリス・リードが出場する。クリスの故障を乗り越えてここまできた姉弟の、心からの演技を楽しみにしたい。

　実は今、日本では、４年ぶりにアイスダンスが見やすい時期を迎えている。五輪で、アイスダンスがかなり放送されるからだ。ぜひ、アイスダンスの放送を見てみてほしい。そして、これまでには知らなかった、新しいフィギュアスケートの世界に触れてみてほしいと思う。

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